大坂、初夏の陣がいよいよ開戦――。女子テニスの世界ランキング1位・大坂なおみ(21=日清食品)が4大大会3連続優勝の大偉業をかけて「全仏オープン」(フランス・パリ)に臨む。昨年9月の全米オープン、今年1月の全豪オープンを制した大坂は、日本人初の4大大会第1シードとして登場。さらに「4大大会初Vから3連勝」となれば史上初の快挙となる。苦手とされるクレー(赤土)コートで記録ずくめのVへ向け、その可能性とポイントに迫った。


 4大大会の女子シングルス3連続V以上の達成者はマルチナ・ナブラチロワ(米国)、シュテフィ・グラフ(ドイツ)、セリーナ・ウィリアムズ(米国)らそうそうたるメンバー。大坂が今大会Vなら伝説のプレーヤーの仲間入りを果たすと同時に、4大大会初Vから3連勝という前人未到の大記録をテニス史に残すことになる。

 では、その可能性は? 全仏制覇のカギを握るドロー表をじっくり眺めたDAZNテニス中継解説者の佐藤武文氏(47)は「最初のヤマ場は2回戦、最大の決戦は準々決勝」と、ずばり分析した。

 初戦1回戦(28日)の相手、世界ランキング90位アンナ・シュミエドロバ(24=スロバキア)は難なく倒せそうで、問題は2回戦だ。2017年の全仏オープンを制覇して一躍ニューヒロインとなったエレナ・オスタペンコ(21=ラトビア)、元世界1位のビクトリア・アザレンカ(29=ベラルーシ)の勝者と対戦するが、どちらも難敵。オスタペンコは大坂と同い年で「コートに関係なく、とにかく打ちまくるテニス」(佐藤氏)という強打が売りの選手。あの世界3位シモナ・ハレプ(27=ルーマニア)が引いたほど勢いに乗らせると手ごわい。アザレンカも「結婚、出産を経た今も調子はいい」(同)と侮れない相手だ。

 さらに順当に勝ち上がったとしても、準々決勝で対戦する可能性のある同8位アシュリー・バーティ(23=オーストラリア)こそ“事実上の決勝戦”の相手だという。
「彼女はとにかくクレーコートがうまい。スライスが上手で、ショットに変化をつけられる。直感ですが、大坂選手は彼女に勝てばそのままいけそう。逆に負けたら彼女が優勝する気がしますね」(佐藤氏)

 15歳で天才と言われ、一度はテニスを辞めてクリケット選手に転身した変わりダネ。この赤土巧者が偉業の行方を左右しそうだ。

 一方、プレー面でのポイントはジャーメーン・ジェンキンス氏(34=米国)がコーチに就任して以来、取り組んできたネットプレーだという。佐藤氏は「大坂選手のドロップショットに注目」とした上で「自分の持ち味の強打が決まっている上で使うならいいが、状況に関係なく単にドロップショットを多用し、ミスが重なったら危険なサインです」と意外な警鐘を鳴らす。ドロップを効果的に使っているのか? ここは要チェックだ。