【BNPパリバOP】大坂なおみ 新コーチの手腕は本物

2019年03月11日 20時00分

試合途中で大坂と話すジェンキンス・コーチの表情は穏やか(AP)

【カリフォルニア州インディアンウェルズ9日(日本時間10日)発】強いナオミが戻って来た。女子テニスの世界ランキング1位・大坂なおみ(21=日清食品)が、BNPパリバ・オープン初戦となるシングルス2回戦で同65位のクリスティナ・ムラデノビッチ(25=フランス)に6―3、6―4でストレート勝ち。紆余曲折あった昨年覇者が見事な再出発を果たした。その立役者は紛れもなく新コーチのジャーメーン・ジェンキンス氏(34=米国)。眠れる新女王を再生させたエリートコーチの手腕に迫った。

 お得意の「カモーン!」という雄たけびが何度もコートに響き渡った。この日の新女王に「弱気」の文字など一切ない。2月のドバイ選手権初戦で敗れた因縁の相手に対し、第1セットは一度もブレークを許さず奪取すると、その後も要所で絶妙なウイナーを決め、ポイントを先行された場面では強烈なサービスエースで打開。堂々たるプレーで世界1位として初勝利を飾った。

 前年覇者として出場する今大会は4大大会の次に格付けが高い「プレミアマンダトリー大会」。前年優勝時に得た1000ポイントが大会後に失効するため、世界1位を守るには早期敗退は許されない。しかし、絶対に負けられない真の理由は「コーチ」にある。

 昨年の全米オープン、今年の全豪オープンと4大大会2連勝で世界1位となったニューヒロインは、その直後に元コーチのサーシャ・バイン氏(34)と契約解除。その理由を「幸せよりも成功を優先することはない」と意味深な表現を使ったことで、周囲は「人間関係のもつれか」と騒ぎ立てた。正式コーチ不在で臨んだドバイ選手権では初戦で惨敗。試合後の会見では涙を流すなどメンタルも疲弊していった。そんな中、ジェンキンス氏が“救世主”として登場。周囲の雑音を払拭させるには、ここが絶好のタイミングだった。

 かつて4大大会通算7勝のビーナス・ウィリアムズ(38=米国)のヒッティングパートナーを務めた同氏は今年1月7日に米国テニス協会(USTA)の女子ナショナルコーチに就任。選手としての実績はないものの、コーチとしての手腕は高く評価されていた。そんなジェンキンス氏と大会前に契約し、初練習を行った大坂は「彼はグッドヒッターで、本当にいい選択をした。練習はとてもハードだけど強くなっていると感じる」と手応えを得ていた。

 そして迎えた初陣。そのプレーは明らかに前回とは別人だった。DAZNテニス中継解説者の佐藤武文氏(47)は「負けられない戦いの中で、リスクを承知で攻める姿勢を貫いたこと」を勝因に挙げ、具体的に2つのプレーに注目した。

 まず一つは「相手のセカンドサーブに対して、前に出てプレッシャーをかけたこと」。実際にムラデノビッチは大事なところでダブルフォールトでペースを崩した。もう一つは「以前よりも浅いボールに対してちゃんと中に入ってショットを打ち、相手の時間を奪っていた」と指摘。これによって相手のミスを誘発し、常に自分のペースで試合を運べたという。

 この念入りな対策と戦術が“ジェンキンス効果”であることは明白だが、さらにメンタル面での助言も光った。その象徴的なシーンが第1セット終了後のオンコートコーチングだ。

 大坂に呼ばれたジェンキンス氏は、ベンチへ行くとまずハイタッチと握手。「サーブはうまくいっている」「リターンが効いているから、ラインの際を打たなくていい」という技術面に加え「ポジティブなボディーランゲージをやっていこう!」とハッパをかけた。その言葉通り、大坂は以前のようにミスしてもラケットを投げたり落胆の表情を出さず、笑顔を見せる余裕さえあった。

 試合を組み立て、気持ちも乗せる――。米国協会も一目置くコーチング手腕によって、大坂は完全に息を吹き返した。12日に予定されている3回戦のダニエル・コリンズ(25=米国)戦でも躍動する姿を見せてくれそうだ。

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