大坂なおみ “つなぎ役”吉川コーチの評価と隠された任務

2019年02月19日 16時30分

全米に続き、全豪オープンも制し4大大会2連勝中の大坂(ロイター)

 コンビ解消が「吉」と出るか、「凶」と出るか――。女子テニスで1月の全豪オープンを初制覇した世界ランキング1位の大坂なおみ(21=日清食品)が不退転の決意でドバイ選手権(UAE)へ臨む。大会前、2017年末から二人三脚で歩んできたドイツ人コーチのサーシャ・バイン氏(34)と突然、契約を解消。テニス界がザワつく中での再始動となるが、ここへきてバイン氏の代役を務める日本テニス協会女子代表・吉川真司コーチ(41)の“株価”が急上昇しているという。

 昨年9月の全米オープンに続き、全豪オープンも制し4大大会2連勝。アジア人初の世界ランキング1位となって日本中がお祭り騒ぎとなる中で、大坂は自身のツイッターでバイン氏との契約解除を発表した。精神的支柱として一緒に世界の頂点に立った相棒の“切り捨て”には、全世界から賛否が飛び交った。騒動後の初陣となるドバイ選手権は今後を左右する重要な大会になる。

 そのキーマンはズバリ、新コーチが決まるまでの“つなぎ役”となる吉川氏だ。亜細亜大卒業後、実業団を経て2007年に現役引退。12年に日本テニス協会強化本部ナショナルチーム女子コーチに就任し、これまでも陰ながら大坂をサポートしてきた。

 同氏に近い関係者ほど評価は絶大で「彼女を騒動から守るには吉川コーチが適任」という声も聞こえてくる。

 大学の先輩にあたるDAZNテニス中継解説者の佐藤武文氏(47)は「非常に真面目。選手との距離が近過ぎず、一歩下がって接するので、選手の誰からも嫌われない。まるで空気のようにサポートし、とにかくクセのない男です」と評する。

 大坂は連日のようにニュースに取り上げられており、相当なストレスになっていることも考えられる。「今大会はとにかく初日が大事。ここで負けたら絶対にコーチ解除が悪かったと言われる。雑音を振り払って最初の試合で流れに乗っていくためにも、吉川君のような性格の人間が今の大坂選手に合っていると思います」(佐藤氏)

 コーチングも一流だ。ヒッティングの技術が非常に高く、1996年ウィンブルドン選手権4強入りの伊達公子さん(48)が08年に現役復帰した際にラリー練習の相手を務め、伊達さんは「すごく打ちやすい」と絶賛。「ミスがなく、打球に変なスピンもかからない」(佐藤氏)。性格同様、打球にもクセがないようだ。

 もう一つ、吉川氏には重要な“隠れ任務”がある。ある協会関係者は「協会の派遣コーチって悪く言うと“御用聞き”みたいな部分がある。要はクセが強い人はダメ。つかず離れず、当たり障りのない感じでやらないといけない。そんな苦労が多い状況で、今回のような緊急事態となると、ますます吉川コーチの人柄が生きてきますね」

 今回の“緊急登板”は、大坂の東京五輪出場にも影響を与えそうだという。「新コーチが決まるまで同行し、変な言い方をすると“恩”を売る。それで大坂選手には気持ちよく(国別対抗戦の)フェドカップ(4月20、21日、VSオランダ)に出てもらう。それが彼に与えられた最大の使命ですよ」(別の関係者)

 フェド杯出場は五輪出場の重要な条件の一つ。大坂は19、20年に最低1試合は出ないと条件を満たさない。何とかフェド杯をクリアし、東京五輪までエスコート――。そんな協会全体の期待も吉川氏は背負っている。