女子テニス界に「大坂時代」が到来する。全豪オープンを制し、昨年9月の全米オープンに続く4大大会2連勝を飾った大坂なおみ(21=日清食品)は、ついにアジア人初の世界ランキング1位になった。女子テニスのツアーを統括するWTAが28日、発表した。日本テニス史に金字塔を打ち立て、名実ともに世界の頂点に立ったことでさらなる「なおみフィーバー」も予測されるが、今後の最大の注目は来年に迫った東京五輪だ。“あの問題”の決着も近づく中で、金メダルへの見通しは――。

 26日に行われた決勝はペトラ・クビトバ(28=チェコ)を7―6(7―2)、5―7、6―4で撃破。快挙の瞬間はテレビ各局でニュース速報が流れ、大阪駅前では号外が出されるなど日本列島はお祭り騒ぎだった。日本テニス協会の内山勝理事(74)は「本当に歴史的な一日。いずれやってくれると思ったけど、こんな早く世界ナンバーワンになる日が来るとは…」と日本人の悲願成就に感激。さらに「僕はもっと伸びると思う。女子テニス界に大坂時代が来るでしょう」と語った。今回の偉業にはさまざまな“副産物”がついてくる。生涯獲得賞金はプロ転向7季目で、日本女子で初めて1000万ドル(約11億円)を突破した。さらには表彰ラッシュだ。すでにテニス協会内部では「何らかの特別賞を与えるべき」との声が上がり、昨年に続いて今年もスポーツ界の授賞式、イベントをジャックすることは間違いない。政界関係者からも多数の賛辞が贈られており、今後の活躍次第では「国民栄誉賞」の可能性も十分にある。また「世界ランキング1位」の特別手当(ボーナス)を出すスポンサーが出てくることも予想される。

 そうした中で最大の関心は2020年東京五輪。狙うは日本テニス界初の金メダルだ。内山氏は「今の段階で世界1位ですし、まだ21歳。普通に考えて金メダルに一番近い存在でしょう」と断言。

 すでに大坂は「日本代表として東京五輪に出ることが夢」と公言しているが、その前にやるべき“宿題”もある。

 父がハイチ出身の米国人、母が日本人という大坂は、現在は日米の二重国籍。五輪憲章には「同時に2つ以上の国籍をもつ競技者は、自己の判断により、どちらの国を代表してもよい」と記載されているが、そもそも日本では「22歳に達するまでに、いずれかの国籍を選択する必要がある」(国籍法第14条第1項)。そして、そのXデーが22歳の誕生日となる10月16日だ。

「特に大坂選手の国籍問題について協会内部で議題には上がっていない」(某協会幹部)というが、一般人ならまだしもこれだけ注目を集めている以上、節目までにきっちりと国籍を1つに絞る必要がある。とはいえ、大坂が米国代表として東京五輪に出ることはあり得ない。東京五輪に出場する条件として国別対抗戦「フェドカップ」に、19年から20年6月8日までの間に原則3試合に出場しなければならず、直近3年以内に国の代表を背負った選手は他国の代表になれないルールが存在する。大坂は昨年4月のフェドカップで日の丸を背負っており、東京五輪に日本代表で出場するのは既定路線だ。

 26日の表彰式では対戦相手を思いやり、トロフィーの前では正座をしてはにかんだ。大和魂を持つ“世界のなおみちゃん”が最も似合うのは、やはり東京五輪の金メダルであろう。