ニューヒロインは天下を取れるか。女子テニスで世界ランキング4位の大坂なおみ(21=日清食品)は26日、WTAファイナル(シンガポール)のシングルス1次リーグで敗退し、今季の戦いを終えた。3月のBNPパリバ・オープンでツアー初優勝、8月の全米オープンでグランドスラム初制覇と飛躍を遂げた大坂について、今大会を独占配信する「DAZN(ダゾーン)」で解説を務める佐藤武文氏(47)が今季躍進の理由と来季の課題を指摘した。

 佐藤氏は大坂の躍進について、潜在能力が開花したことや今季から就任したサーシャ・バイン・コーチ(34)の功績が大きいと改めて指摘。その上で、最大の武器である高速サーブを軸としたゲームの組み立てを自分の形に落とし込めたことが飛躍の要因になったという。

 特に顕著だったのは8月の全米オープン決勝。ファーストサーブ成功率が73%で同ポイント率も73%と、対戦した元女王セリーナ・ウィリアムズ(37=米国)を圧倒した。佐藤氏は「常にエースを狙うわけではないですが“3球目のボール”を思い切り打てるので相手に重圧をかけられた。だからサービスゲームをキープできる。女子はキープ率が低いのでそこは強みです」と分析した。

 来季に向けては「世界ランキング1位」を目標に掲げる。そこには何が必要か。佐藤氏によると、敗退したWTAファイナルに“ヒント”が隠されているという。

 今大会で対戦した世界トップクラスの選手は、大坂が打つコースを見抜き、持ち味の強打を許さないように対策として低いリターンを多用した。

「サーブの次はネット前でボレーということになりますが(大坂に)自信がないからコースは読まれるし、力んでミスも出る。さらに、攻撃的なプレーができないので主導権を握られていました。もっと攻撃的なスタイルを貫くことですね。その上でネット前でドロップとかアングルボレーというボールさばきを身につければ…」

 また、メンタル面にも注文を出した。「大坂選手はアジア人として初の全米オープン制覇で世界から注目されています。全米の時はブーイングも受けましたが、そういうことがあってもずぶとくなって乗り越えていかないと。彼女自身も『ネガティブなので』と言ってますが、1位になるにはポジティブさも大事です」

 さらには「大坂選手に余計な重圧を与えないように、チームとしても雑音をシャットアウトしないといけないです。これからオフに入りますが、全米オープンを制覇して(本業以外の)仕事もたくさんあると思います。代理人がどこまで受けるのか。そこはバランスが必要」と述べた。

 ファイナルでは結果を残せなかったものの、佐藤氏は「ポテンシャルも伸びしろもある。サーブももっと磨いていけば1位になれると思います」とさらなる進化を期待している。