テニスの4大大会最終戦、全米オープンが27日にニューヨークで開幕した。男子の世界ランキング19位の錦織圭(28=日清食品)にとっては正念場の大会。直前に行われたハードコート前哨戦は序盤に姿を消すなど大不振に陥り、さらに今大会は強豪揃いのブロックに入った。それでも起死回生の道はまだ閉ざされていない。GAORAテニス中継解説者の佐藤武文氏(47)は「絶対無理だなという感じではない」と悲観論を一蹴。その根拠は――。

 7月のウィンブルドン選手権で自身初の8強進出を果たした錦織は最高の状態で全米を迎えるはずだった。ところが、前哨戦3大会はベスト8、初戦敗退、2回戦敗退と失速。全米のドロー(組み合わせ)も厳しいものとなった。

 28日(日本時間29日)に組まれた初戦の相手、マクシミリアン・マルテラー(23=ドイツ)は同50位ながら全豪は3回戦、全仏も4回戦まで進むなど大舞台に強い。佐藤氏も「侮れない。初戦の入りが大事」と警戒する。順当なら2回戦で同39位ガエル・モンフィス(31=フランス)、3回戦で同13位ディエゴ・シュウォーツマン(26=アルゼンチン)、4回戦で同4位アレクサンダー・ズベレフ(21=ドイツ)と全く気が抜けない。それでも佐藤氏は全体的な印象として「タフなドローだけど、第1~3のシードには当たらない。みんなの期待が薄れている時に彼は活躍する。悲観はしていない」との見方を示した。

 課題も明確。フォアハンドの連打の回数が以前より少なくなっていることを挙げた。「錦織選手のフォアは『ダイナマイトフォア』と言われている。バックハンドはうまいけど、本来の武器はフォア。『全部フォアで打てる!』そのぐらいの攻撃力でいってほしい」と佐藤氏は修正点をあぶり出した。

 世界的に評価が高いのはバックハンド。ただ、最近はやや頼りすぎてしまっている。「バックハンドが得意なのでフォアの後にバックハンドを打つこともある。そこをフォア、フォアと続けてほしい」(同)。安易にバックを打つのではなく、フォアに回り込んで打つ勇気を持つ。それが相手により脅威を与え、試合の主導権を握ることにつながるという。

 この点からすると、ドローも好転する。佐藤氏がポイントに挙げたのは3回戦で想定されるシュウォーツマン戦。身長170センチで錦織と同様にラリーが得意だ。「シュウォーツマンはフォア一発でエースが取れるタイプじゃない。ラリーが長く続く。錦織選手は自分らしい展開がつくれる。シュウォーツマンとの対戦で思い出してほしい」と佐藤氏は力を込めた。

 前哨戦では戦うことができなかったタイプで、錦織にとってはまさに“待ち人来る”。この機会を生かし、最も相性のいい4大大会で上位進出へとつなげられるか。