卓球の全日本選手権男子シングルス決勝(21日、東京体育館)、張本智和(14=エリートアカデミー)が10度目の優勝を狙った水谷隼(28=木下グループ)を4―2で下し、男女を通じシングルス史上最年少優勝を飾った。リオデジャネイロ五輪銅メダリストに付け入る隙を与えない圧勝。「新スタイルを確立した」との声も上がる中、卓球大国の中国も異常警戒している。快挙を成し遂げた天才少年の舞台裏に迫った。

 日本のエース水谷に勝利した張本を、日本卓球協会の宮崎義仁強化本部長(58)は大絶賛した。

「新時代の卓球ですよ。超攻撃的卓球です。サーブからでもレシーブからでも攻めることができる。あんなことができる選手は誰もいない。中国にも勝てるスタイル。ひいては2020年東京五輪で金メダルを取れる卓球なんです!」

 14歳の中学2年生にして、この強さ。当然ながら人一倍の苦労と努力の成果で、その姿勢は周囲も驚く。日本男子の倉嶋洋介監督(41)は「自分(張本)の追い込み方は選手からも一目置かれている。自分が一番苦手なものや厳しい練習は絶対にやる。『おぇ』と吐き出しそうになるほどやっています」。それでもまだ発展途上。「小学生が、ちょっと青年になった段階でアスリートまでいっていない」のが現状で「もっとボールの威力が付けば、技術もアップする。本当に恐ろしい選手になりますよ」と予測する。

 張本は卓球以外もまじめで、学業もおろそかにしない。宮城・仙台にいた小学生時代は学習塾にも通い、猛勉強。東京に拠点を移してからも昨年夏まで塾から課題をもらって遠征先で取り組んだ。父でコーチの宇(ゆ)さんが「学ぶ姿勢が卓球を考える力につながっていると思います」と語るように、勤勉さも強化につながった。

 トップ選手なら誰でも直面する“外圧”も経験済みだ。張本の両親の故郷・中国では当初“日本の神童”と話題を呼んだが、昨年の世界選手権で最年少ベスト8と結果を出すと、関心は警戒心に変わった。張本はかねて中国で個人合宿を行っていたが、昨年から中国サイドの方針変更で実施できなくなった。意向を知らずに中国入りし、途中で帰国したこともあったという。

 中国メディアからは厳しい内容の記事を書かれることもあるという。それでも宇さんは「いろいろありますね。でも、私たちは自分たちでやるべきことを精一杯やればいいと思っています」。“雑音”に気を取られず卓球に集中。それがメンタル強化につながっている。

 張本は「海外の強い選手にも勝って、2020年東京五輪で金メダルを取れるように頑張りたい」。苦労を惜しまない14歳の今後がますます楽しみだ。