【ドイツ・デュッセルドルフ1日発】卓球の世界選手権個人戦第4日、男子シングルス2回戦で張本智和(13=エリートアカデミー)が、リオデジャネイロ五輪銅メダルの水谷隼(27=木下グループ)を4―1で破る大金星を挙げた。史上最年少の日本代表として出場している13歳が演じた今大会最大の番狂わせ。驚異的な成長スピードで、世界の卓球界にも大きな衝撃を与えた。

 前日の1回戦でストレート勝ちし、世界選手権初勝利を挙げたばかりの新鋭が歴史を動かした。相手は全日本選手権で史上最多9度の優勝を誇る日本の大エース。勝利の瞬間、右手を高々と上げて喜びを示し「卓球をやってきた中で一番うれしかった。気持ちがプレーに出ていた」と声を弾ませた。

 サウスポーの水谷に対し、得意のバックハンドで応戦した。昨年の世界ジュニア選手権で2冠を獲得したホープもシニア選手にはパワー負けすることが多かったが、この日はフォアハンドでも腕を振って対抗し、試合開始から3ゲームを連取。相手を台から後退させる積極的な攻めで、日本史上最大の“下克上”を成し遂げた。

 国際卓球連盟の公式ツイッターも「衝撃的な番狂わせ」と速報したほどだったが、実は日本男子の倉嶋洋介監督(41)には予感があった。遠征出発前から「予想以上のスピードで成長している。以前の子供の卓球から世界トップの卓球をこの1年間で身に付けているのですごいなと思う」と大仕事の可能性に言及していた。

 日本のエリートアカデミーで英才教育を受ける張本は、両親の故郷である中国・四川省でも合宿を行い、中国のトップ選手と猛練習。才能に加え、この好環境で成長しないわけがない。

 さらに現在はフィジカルを向上させるため、個別の特別メニューで鍛えている。「現時点でも技術はトップ20のレベル。力強さを増せばおのずと世界トップになる」(倉嶋監督)とまだまだ成長段階。身長も現在171センチで「まだ伸びています」(張本)。体格面でも世界トップと戦える準備ができていたが、ドイツの地で早くも真価を発揮した。

 2020年東京五輪まであと3年。「日本神童」と中国が恐れる張本の挑戦は始まったばかりだ。