3年後のリベンジへ――。東京五輪・卓球女子団体決勝(5日、東京体育館)、日本は中国に0―3のストレート負けを喫して銀メダル。2012年ロンドン銀、16年リオ五輪銅に続く3大会連続のメダル獲得となったが、悲願の頂点はお預けとなった。敗戦の裏側では、打倒中国の「切り札」として準備を進めていた計画が白紙になっていたことが判明。一方、24年パリ五輪で金メダルを獲得するためには第2の〝みうみま〟の台頭が不可欠だ。

「王国」の強さは圧倒的だった。第1試合のダブルスは石川佳純(28=全農)、平野美宇(21=日本生命)組が最初のゲームを先取するも陳夢、王曼昱組の反撃を食い止めることができず、黒星発進。直後のシングルスでは伊藤美誠(20=スターツ)が孫穎莎の前に屈してシングルス準決勝のリベンジに失敗すると、第3試合も平野が落として完敗に終わった。

 試合後、メンバーの表情は悔しさと同時に充実感も漂っていた。伊藤は「まず、決勝の舞台に立つことができてうれしかった。シングルスでは自分らしいプレーが出せなかったけど、団体戦では少し自分のペースに持っていくことができたので、楽しく試合ができた」と率直な感想を語った。

 今大会は混合ダブルスで中国ペアを破って日本卓球史上初の金メダルを獲得。団体に向けて追い風になるかと思われたが、現実はそんなに甘いものではなかった。馬場美香監督は「できる限りの準備はやってきたが、今回は実力がまだ追いつかなかったということ」と敗戦を受け入れた。

 打倒中国の「切り札」も不発に終わった。本紙は2年前に日本協会が〝国家機密ラケット〟の製作を水面下で進めていることを報じた。中国ラバーの素材が日本を含む他国と「金属バットと木製バットぐらい違う」(協会関係者)ことから、中国製をもしのぐ高性能ラバーを五輪に合わせメーカー、研究所などと億単位の予算で制作しようとしていたのだ。

 しかし、今回このプロジェクトは白紙になっていたという。開発に携わった関係者は「メーカーには協力してもらう見返りに権利をプレゼントしようと考えていたが、複数のメーカーが集まれば技術を『独占』できない。そうなると協力体制を築くのは難しく、最終的には頓挫してしまった」と明かす。そこには〝大人の事情〟があったというわけだ。

 ラケットで対抗できなければ選手自身の腕を磨くしかない。馬場監督は「これから出てくる選手のどこが優れていて、どの能力が突出していて伸ばしてあげるかというのも必要。相手にないようなスペシャルな技術を持たないといけない」と力を込める。

 幸いなことに日本は幼少期から育成、強化に力を入れているため、若手の台頭が著しい。宮崎義仁強化本部長(62)が「勢力図は2年たてばガラッと変わっているでしょうね」と話すほどで、長年トップで活躍する選手がいる一方で新陳代謝も進んでいる。これからは今回代表の補欠としてチームをサポートした早田ひな(21=日本生命)を筆頭に、中国勢を破った経験がある長崎美柚(19=日本生命)、木原美悠(17=エリートアカデミー)の「ダブルみゆう」らも加わって激しい代表争いを展開することになるだろう。

 2024年パリ五輪で日本がシングルス、団体でも表彰台の頂点に立つためには、日本の卓球界が一体となった強化が必要ということだ。