卓球ニッポン男子をけん引してきた“功労者”はもうひと花咲かせることができるのか。リオデジャネイロ五輪男子シングルス銅メダリストで東京五輪代表にも選出された水谷隼(30=木下グループ)が、本番に向けて静かに闘志を燃やしている。シングルス代表こそ逃した水谷だが、団体戦と混合ダブルス(伊藤美誠とのペア)の出場が決まり「ホッとしている」。それでも「やっとスタート地点に立っただけ。まったく満足していないし、リオでメダル(シングルス銅、団体銀)を取ったからには、やはり東京でのメダルも期待されている」と気を引き締めた。

 苦しんできた心身のコンディションはここにきて復調気配だ。かねて明かしていた視力の不安に加え、昨年11月ごろから腰痛にも悩まされ「ほとんど練習できず満足いく状態ではなかった」。それでも、休養期間を設けて代表発表があった6日から練習を再開し「今では本来通りのプレーができていると思う」と手応えを感じている。

 精神面も充実してきた。「去年はすべての試合が負けられないというか、すごく緊張して戦っていたのを覚えている。でも、あとは前を向いて走るしかないということ。間違いなく去年より今年のほうがいい成績を出せるんじゃないかな」と自己分析できるほど落ち着いている。

 昨年12月のワールドツアー・グランドファイナル後には「もう半年くらい卓球はいい」などのネガティブな言葉が並び、水谷の周囲からは「このまま引退するんじゃないかと思わせるような発言だった」と心配されていた。だが、そんな不安も一蹴した。

 13日に開幕した全日本選手権(大阪)はダブルスのみのエントリー。大島裕哉(25=木下グループ)とのペアで第4日(16日)の4回戦から登場する日本代表の大黒柱は「全日本選手権で優勝した年はすごくいい一年になっている。東京五輪を自分の集大成としてすべての力を出し切りたい」と力を込めた。