康介から公介へ…つながったリーダーのバトン

2016年07月26日 16時30分

平井監督(左)が萩野の才能を引き出した

【水の怪物 萩野の原点(2)】リオ五輪で複数の金メダルを狙う競泳男子代表の萩野公介(21=東洋大)。非凡な才能をこの4年間でさらに引き伸ばしたのは東洋大水泳部の平井伯昌監督(53)だ。

 

 平泳ぎで五輪2大会連続2冠の北島康介氏(33)を育てた名伯楽にとって萩野は驚きの連続だった。苦笑しながら口にした言葉は「どうやって潰そうか」。厳しい練習メニューをいくら課しても、萩野はケロッとこなしてしまう。平井氏は1年目のテーマを「多種目挑戦」と定めた。

 

 ところが、迎えた2013年夏にスペインのバルセロナで行われた世界選手権が転機となる。萩野は最終日の400メートル個人メドレーで失速し、瀬戸大也(22=JSS毛呂山)に金メダルを奪われる。「権利のあるものには全部出るが、無理に出て金が銀になってもしょうがない」と話していた平井氏が受けたショックは大きかった。

 

 その教訓はすぐに生かされる。2年目のテーマに「選択と集中」を掲げた平井氏はスピード強化を図り、萩野はアジア大会で4個の金メダルを獲得して北島以来となる大会MVPに輝く。3年目の昨年は右ヒジ骨折のアクシデントはあったものの、五輪へ「勝てる種目」の絞り込みを行い、本番への準備を整えた。

 

 平井氏は同時に、萩野に次世代を担うリーダーの資質を身につけさせようと努力した。時には怒鳴り、萩野に人としての成長を促した。水泳部の主将に任命し、3月のスペイン合宿では北島氏と同部屋で過ごさせた。「どういう心構えが必要とか、部屋で自然にそうなると思った。萩野は精神的なものも含めてワンステージ上がった」と平井氏。北島氏が4月に引退したため「康介から公介」のバトンは土壇場でつながれた。

 

「北島がいないのは残念ですけど、その分、若い選手がいる」。平井氏の願いを背負うのはまぎれもなく萩野。師弟の夢は結実の時まで、カウントダウンに入っている。