池江璃花子 医療専門家が示す現状と今後の見解 「白血病細胞はほとんどいなくなっているはず」

2020年07月03日 16時35分

10月のインカレで復帰予定の池江(代表撮影)

 4年後の大舞台へ! 白血病からの復帰を目指す競泳女子の池江璃花子(19=ルネサンス)が、退院後初めて練習を公開し、さらなる注目を集めている。先月発表された新たな指導体制でコミュニケーションを重ねながら、日本学生選手権(インカレ=10月、東京辰巳国際水泳場)と2024年パリ五輪を目標に掲げる。とはいえ焦りは禁物で、競技力向上を図りつつも優先事項は健康状態の維持。パリまでの“長期計画”は実現可能なのか。専門家が示した「現状」と「今後」の見解とは――。


 池江が笑顔満開でプールに帰ってきた。2日に短水路(25メートルプール)での反復練習や陸上トレーニングなどで2時間以上汗を流し「(以前と比べると)みんなと同じように練習ができるようになっていて、日に日に力がついてきているなと感じる」と充実の表情だ。

 東京五輪での活躍が期待されながらも、昨年2月に白血病が発覚。「(今まで)頑張り過ぎたんだ。休んで、また頑張ろう」と自らに言い聞かせてきたが、退院までの道のりは想像を絶する苦しみを伴った。それでも、今年3月には406日ぶりにプールに入水し、先月に西崎勇氏(41)をコーチとする新体制で再スタートを切った。

 目標も明確になった。「まずは(10月の)インカレ。あるか分からないけど、あることを信じて練習に励んでいる」。新型コロナウイルス禍で開催は不透明だが、“復帰戦”の舞台としては十分だ。そして、4年後のパリ五輪。「(東京五輪が)1年延びて期待されることもあるけど、あくまでも自分の目標は2024年。来年にとらわれずに、土台をしっかりつくってやっていきたい」と決意している。

 では池江の言う“長期目標”の達成は現実的なのか。池江の現状について血液内科を専門とする、医療ガバナンス研究所理事長で内科医の上昌広氏は「順調に回復していますよね。彼女は骨髄移植の治療で白血病細胞はほとんどいなくなっているはずなんです」と推測する。

 その上でこう指摘する。「ただ、その中で気をつけるべきことは他人からの骨髄移植によって生じるGVHD(移植片対宿主病)という病気。移植した患者を他人と認識して残った白血病細胞を殺してくれるんですが、それ以外の正常組織も傷めるんです。特に出やすいのが肝臓、消化管、皮膚。抗がん剤や放射線による副作用ではなく免疫の副作用で、症状が重くなる人もいれば、自覚症状がないほど軽い人もいて千差万別なんです」。ただし、池江は「薬はすごく減って、免疫抑制剤はずっと前に終わった」と話しており、GVHDのリスクは回避したとみられる。

 一方、池江は寛解状態を維持して退院、復帰に向けて一歩踏み出したが、再発リスクはどうか。上氏は「経験的に骨髄移植をしてもがん細胞は完全に消えていないと思われているんですね。ですが、ご本人の本来の免疫などで一生再発しないことが多い」と話す。続けて「過去の臨床研究から骨髄移植して2年間再発しなければ、その後の再発リスクがすごく低いことも分かっているんです」と説明した。池江の場合、あと1年以上様子を見て問題なければ、より一層、“本業”に集中できそうだ。

 とはいえ焦りは禁物。「(トレーニングは)気長にやったほうがいいでしょうね。回復はゆっくり着実にするんだけど、どうしても時間がかかるんですよ。特に免疫力の回復は。競技能力の向上については筋力や肺活量、肺などが衰えているので、どこまで戻るかはやってみないと分かりません。完全に戻るかもしれませんけどね」

 ただ、そこは西崎コーチが「今は(池江の)健康な状態を1年通してキープするのが一番重要」と細心の注意を払っている。「泳力は中学1、2年に戻りつつあると思う。早く高校生くらいまでに戻したい」と意気込む池江の、“花の都”まで続く4年計画は始まったばかりだ。