瀬戸大也ら競泳陣を強くした“汁物意識改革”

2020年06月02日 11時00分

栗原氏(右)は瀬戸と優佳夫人(左)に栄養面をレクチャーしてきた(提供写真)

【どうなる?東京五輪・パラリンピック(53)】いつまでも落ち込んでいるわけにはいかない。新型コロナウイルス禍で東京五輪が1年延期となり、多くの競技関係者は活動を制限されながらも再スタートに備えている。そんな中、競泳の瀬戸大也(26=ANA)らアスリートの栄養面を支える味の素ビクトリープロジェクト(VP)の栗原秀文シニアディレクター(SD=44)をオンライン取材で直撃。延期五輪へ向けて選手の「食」をどう扱うのか。インタビュー前編は“汁物意識改革”をテーマにお届けする。

 競泳男子のメドレー2種目で東京五輪出場権を手にしている瀬戸は、埼玉栄高時代の同級生で本格的な指導歴がない浦瑠一朗氏(25)を新コーチとして招聘した。五輪延期が正式に決まり「同じことをやるより違ったアプローチのほうが、覚悟を持って挑戦できる」と話していたように、4月には小学5年から指導を受けてきた梅原孝之コーチ(49)との関係を解消。その後の動向に注目が集まっていたが、水泳界のエースは“同世代タッグ”で金メダルを目指す。

 東京五輪の1年延期は3月24日に正式発表された。瀬戸ら多くのアスリートの「食」を支える栗原氏は「遠い昔のよう」としつつ「自分たちがショックなんだから選手はなおさら。徐々に再開ムードが出てきたけど、目の前にはなかなか元には戻らない現実があって『頑張れ』とは言えない」と話す。

 それでも、一部の競泳選手からは食事に関する相談が後を絶たないという。目前のターゲットが“お預け”となりながらも、高い意識を保ち続けていることに「相談してくること自体、(個人の意識)レベルが上がっているということだよね」と目を細めるが、これは栗原氏を含めたVPメンバーによる「意識改革」の成果とも言える。

 4年前のリオ五輪。競泳日本選手団はサンパウロを拠点に約2週間の事前合宿を行うなど、現地に1か月以上滞在した。ただ、その事前合宿では屋外プールで気温15度になる日もあり、スタッフ陣は意外な寒さに頭を悩ませた。

 そこで選手に提供したのがビタミンA、C、E(ACE)が含まれる緑黄色野菜を使用した鍋料理。栗原氏によれば、これら3種類のビタミンを効率よく摂取することは「体の中からコンディションを整えていく上で免疫力を高めるのに非常に重要」だという。その結果「みんなガタガタ震えたりしていて、体調を崩してしまうような選手が出たらまずいなと思っていたけど、毎日のように食べていたこともあって、誰一人風邪をひかなかった」。

 それから自国開催の五輪に向けて選手らとコミュニケーションを続けてきたが、明らかに行動の変化を感じたのが昨年の世界選手権(韓国)だった。「驚くべきことに、みんなが自発的に汁物を飲むようになった。今までは僕らがレース後すぐに弁当を食べるように促すと同時に『(汁物を)飲んでおくように』と言っていたけど、選手がそれぞれ『今日は何にしようかな』と。これはすごく重要で、エネルギーを補給するために食べても胃腸が動いていないとしっかりと消化吸収できない。そういう意味でも選手たちは汁物における、だしの機能(うま味成分であるグルタミン酸)を理解して、汁物を最初にひと口飲んでから食事するのが習慣になった」

 選手自身による栄養管理の意識改革で、新型コロナ禍での緊急事態宣言の期間中も問い合わせが相次いだ。VP側は「できる限り簡単なものを」ということで、手軽で簡単な「勝ち飯」レシピと自社製品の「鍋キューブ」を独身、既婚者にかかわらず提供。選手の理解度が高いゆえに満足度も十分得ているようだ。
 今後の取り組みについては手探り状態が続きそうだが、栗原氏は「バックヤードでサポートする立場として表立って動く時間がなかなか取れないということは、逆に中を固める仕事やこれから先のことをより頭を動かしてつくり込んでいく時間ができたということ。逆に(この期間を)プラスにしたもの勝ち」と笑顔を見せた。(後編に続く)

★おすすめレシピ=本紙では味の素VPイチ押しの「コンディショニング野菜だし鍋」のレシピを紹介! 準備する材料と作り方は次の通り。
【材料】(4人前)

 タラ(または白身魚)4切れ、エビ4尾、ショウガ2分の1かけ、ハクサイ4分の1株(500グラム)、ニンジン3分の1本(50グラム)、シイタケ4枚、長ネギ1本(100グラム)、木綿豆腐2分の1丁(200グラム)、水720ミリリットル、「鍋キューブ」コクとうま味の野菜だし鍋4個。

【作り方】
 (1)タラはひと口大に切る。エビは尾のひと節を残して殻をむく。ショウガは千切りにする。

 (2)ハクサイは葉と芯に分け、葉は4センチ幅に切り、芯は4センチ幅のそぎ切りにする。ニンジンは薄い輪切りにし、シイタケは半分に切る。ネギは斜め薄切りにし、豆腐はひと口大に切る。

 (3)鍋に水、「鍋キューブ」を入れて火にかけ、煮立ったら、(2)のハクサイの芯、ニンジン、シイタケ、ネギ、豆腐→(1)のタラ、エビ、ショウガ→(2)のハクサイの葉の順に加えて煮る。

 また、鍋のシメには「野菜だしうどん」がオススメだ。

【高校同級生コーチと強力タッグ】競泳男子のメドレー2種目で東京五輪出場権を手にしている瀬戸は、埼玉栄高時代の同級生で本格的な指導歴がない浦瑠一朗氏(25)を新コーチとして招聘した。五輪延期が正式に決まり「同じことをやるより違ったアプローチのほうが、覚悟を持って挑戦できる」と話していたように、4月には小学5年から指導を受けてきた梅原孝之コーチ(49)との関係を解消。その後の動向に注目が集まっていたが、水泳界のエースは“同世代タッグ”で金メダルを目指す。