【世界水泳】愛と科学で2冠・瀬戸を支える愛と科学の“夫婦二人三脚”

2019年07月30日 11時00分

優佳夫人は専門家からアドバイスを受けて食事面をサポート

【韓国・光州発】大黒柱の貫禄だ。水泳の世界選手権最終日(28日)、競泳男子400メートル個人メドレー決勝は瀬戸大也(25=ANA)が4分8秒95で金メダルを獲得し、200メートルとの2冠で、両種目で東京五輪代表入りが内定した。2冠達成は2003年の北島康介以来で、通算4個目の金メダルは日本最多記録だ。トビウオジャパンエースの活躍には、妻で飛び込み元日本代表の優佳さん(24=旧姓馬淵)の“内助の功”があることでも知られている。夫婦二人三脚で来年の金メダルを目指す中で、妻を“やる気”にさせた「ひと言」とは――。

 すべての力を振り絞った。最初のバタフライから先頭に立った瀬戸は優位にレースを進めたが、ラストの自由形になると隣のレーンで泳ぐジェイ・リザーランド(23=米国)が猛追。徐々に距離を詰められながらも、最後はしのいで200メートル個人メドレーに続く今大会2冠目を手にした。

 開口一番「かなりバテてしまい、今回はラッキーな金メダルだった」。こう振り返ったのも無理はない。今回は前回大会金メダリストのチェース・ケイリシュ(25=米国)が全体10位でまさかの予選落ち。瀬戸は「最高でも、最低でも金メダル」と話していたように、優勝を飾る“お膳立て”は完璧だったからだ。

 それでも世界選手権4個目の金メダルは、北島を抜いて日本最多記録となった。今大会は萩野公介(24=ブリヂストン)、池江璃花子(19=ルネサンス)の男女エースを欠いた中で、大会前から大黒柱として日本チームをけん引してきた。重圧に屈することなく、200メートルバタフライ(2位)を含めて3度も表彰台に立ち、その役割をまっとうした。

 そんな瀬戸を支える存在として知られるのが優佳夫人だ。2017年11月に飛び込み選手としての競技人生にピリオドを打ってから、完全に夫の“裏方”に徹してきた。食事面ではアスリートフードマイスターの資格を取得したことに加え、定期的に専門家のもとを訪ねて勉強会に参加。とはいえ、数ある競技の中でも特にカロリー消費が激しいスイマーに必要な栄養素を取り入れた献立作りは、容易なことではなかった。

 しかも、優佳夫人によれば「主人は『(野菜は)いいや』と残してしまうことが多かった」。このため専門家のアドバイスもあり、これまで肉や魚を使った主菜を2品作っていたところを1品減らし、野菜を使ったメニューを追加。試行錯誤しながら「ニンニクが好きなので小松菜のニンニク炒めを作ったり、練習が厳しいと胃が疲れることもあるので、汁物に野菜をたくさん入れて食べてもらうようにした」。

 こうした食生活に「しっかり栄養素を揃えるのは大変」とも漏らすが、夫のさりげない言葉が“モチベーション”になっているという。「必ず『おいしい』と言ってくれて『家に帰ってご飯が食べたい』と言ってくれる。そういった言葉が本当にうれしくて。サラッと言ってくれるんですよね」(優佳夫人)

 瀬戸夫妻をサポートする味の素株式会社の栗原秀文氏は「食事の中にかなり科学が入っているんですが、食事というのははなかなか科学やエビデンス(根拠)だけで成り立つものではない。科学が入っているのと同時に愛情も入っているわけで、その愛情とともに科学が力を発揮するんです」と指摘する。厳しいトレーニングに耐える瀬戸と献身的な優佳夫人。その献身の裏には、妻をその気にさせる夫の「ひと言」があり、相互で好循環を生んでいるというわけだ。

 もちろん、本当のゴールはまだ先にある。「来年(の東京五輪)を見据えた積極的な姿勢は崩さないように、後半粘れなかったのは来年までの課題」と語ったリオ五輪銅メダリストは、1年後も夫婦二人三脚で頂点を狙う。