3か月で5段階降格・貴乃花親方「解雇」免れた裏事情

2018年03月30日 16時30分

引き揚げる際、エレベーターで頭を下げた貴乃花親方

 なぜクビを切られなかったのか? 日本相撲協会は29日、東京・両国国技館で理事会を開き、数々の問題行動を起こした貴乃花親方(45=元横綱)への懲戒処分を協議し「委員」から「年寄」への2階級降格を決定。本人に通告した。横綱経験者の平年寄への降格は1985年11月の花籠親方(元横綱輪島)以来。1月4日に理事を解任されて以降、約3か月でなんとトータル5階級降格となった。一方で前日の年寄総会では契約解除(解雇)を求める声もあったが、理事会では検討すらされず。今回の処分決定の舞台裏を追った。

 日本相撲協会の八角理事長(54=元横綱北勝海)は理事会後の会見で、貴乃花親方を「委員」から「年寄」へ2階級降格させる処分を発表した。主な処分理由は2点。先の春場所で初日(11日)を無断欠勤し、その後も協会からの出勤の求めを無視して8日目(18日)まで欠勤を続けた。また、弟子の十両貴公俊(20)が8日目に支度部屋で付け人を暴行した問題の監督責任も問われた。

 貴乃花親方は元横綱日馬富士(33)による弟子の十両貴ノ岩(28)への暴行事件で相撲協会の調査に非協力的な姿勢を貫き、1月4日に理事を解任された。この時点で2階級下の「役員待遇委員」に降格。さらに、28日の職務分掌では2月の理事候補選で落選したことを受けて、慣例で1階級下の「委員」になっていた。

 今回の処分で理事解任以降はトータルで実に5階級の降格。月給も、理事時代の144万8000円から80万8000円と64万円も減る。親方の序列では協会のナンバー3から、一気に83番目まで転落した。ただ、今回の処分が重いか軽いかは意見が分かれるところ。一般の会社ならクビになってもおかしくはなかったからだ。前日28日の年寄総会では親方衆から契約解除を求める意見も出たが、この日の理事会では検討すらされなかった。

 なぜ解雇とならなかったのか。実は、貴乃花親方が貴公俊の暴行を境に“改心”した姿勢を見せる以前の段階から、協会幹部の間には「契約解除までは難しい」との認識があった。日馬富士の事件発生当初から貴乃花親方は相撲協会に対して反抗的な姿勢を示していた。事件の被害者側だったこともあり、世間の多くが貴乃花親方を支持。今回の一連の問題行動で潮目が変わったとはいえ、かつて日本中に大フィーバーを起こした「平成の大横綱」の人気は根強いものがある。

 ここで貴乃花親方を解雇すれば、どれほど協会側が正しくても猛烈な批判にさらされかねない。しかも、親方が処分を不服として訴訟などを起こせば社会問題化し、影響は数か月単位に及ぶ可能性もある。協会にとってはリスクが高すぎる選択肢だったのだ。

 そこで貴乃花親方が連日にわたって反省の態度を示している以上、最も現実的な落としどころが降格処分だった。もちろん、今後に貴乃花親方が再び問題行動を起こすようなことがあれば、今度こそ協会としても真剣に解雇を検討せざるを得なくなるだろう。

 八角理事長は貴乃花親方の今後について「真面目に仕事をしてくれて、また組織人として改めてもらえれば」。処分を受け入れた貴乃花親方は「大相撲ファン並びに多大なるご心配をおかけした支援者後援者の皆様、そして相撲協会の皆様にご迷惑をおかけしたことを深く反省し、新たな気持ちで大相撲発展のためにも精進をし、真摯に処分を受け止め、鍛錬に励むことを貴公俊と話しております」(原文ママ)とコメントを発表した。

 日馬富士の事件が発生してから5か月あまり。文字通り「一兵卒」となった貴乃花親方は、ここからどこへ向かうのか。定年退職まではまだ20年もある。