平成の大横綱はどうなるのか。大相撲春場所(25日千秋楽、大阪府立体育会館)は横綱鶴竜(32=井筒)の4度目の優勝で幕を閉じた一方で、数々の騒動で渦中にいる貴乃花親方(45=元横綱)はここから“本番”を迎える。28日の年寄総会で親方衆による責任追及は避けられず、29日の理事会では処分が下される見込み。愛弟子の十両貴公俊(たかよしとし=20)による付け人への暴行を境に平身低頭な姿勢に転じたが…同親方に大ダメージを与える処分案まで浮上しており、やはり厳罰は逃れられない情勢だ。

 平成の大横綱が土俵外で繰り広げた“荒れる春場所”の15日間が幕を閉じた。貴乃花親方は数々の騒動で話題を独占し、本場所の土俵をかすませた。
 まずは元横綱日馬富士(33)の傷害事件をめぐる日本相撲協会の対応を問題視して、春場所2日前の9日に内閣府へ告発状を提出。さらに場所中は本来の職場である会場役員室に常駐せず、初日から無断欠勤や遅刻、早退を繰り返した。

 ところが、8日目(18日)に愛弟子の貴公俊が付け人に暴行を加えてから言動が一変。それまでの勤務態度を改め、告発状は「ゼロにする」と事実上の撤回を表明した。さらに「一兵卒として出直す」とした上で、貴公俊については「寛大な措置をお願いしたい」と“情状酌量”を訴えている。千秋楽も午後0時半に会場の役員室に出勤。約4時間滞在して勤めを果たした。

 報道陣への対応も180度変わった。この日は京都・宇治市内での朝稽古後に取材に応じ、春場所の勤務を終えて会場から引き揚げる際にも丁寧に質問に答えた。さらに京都市内で開かれた打ち上げパーティーでも取材を受けた。実に一日3回の取材対応。相撲協会と対決していたころは記者団の質問を受け付けなかっただけに、改めて「全面降伏」の姿勢を示す格好となった。

 この日の打ち上げでも後援者らに対して貴公俊の暴行問題について謝罪。ひたすら「平身低頭」の姿勢を貫いた。とはいえ、今回の改心の姿勢は遅きに失した印象は否めない。貴乃花親方も出席する28日の年寄総会を前に、親方衆からは「いろんな問題を起こしたことは変わらない」「今は低姿勢でも、いずれまた問題を起こす。これまでもそうだった」などと徹底追及する構えは崩していない。

 29日に開かれる理事会では今場所までの「役員待遇委員」から「主任」や最下位の「年寄」への降格が有力視されているなか、協会幹部の間では一定期間の「業務停止」とする案も出ている。

 協会の定款で定められている処分は軽い順に「けん責」「報酬減額」「出場停止」「業務停止」「降格」「引退勧告」「懲戒解雇」の7段階。「業務停止」は「降格」より1段階軽い処分とはいえ、その間は相撲協会の業務だけでなく弟子の指導もできなくなる。現在、貴乃花部屋に部屋付き親方は不在。一門内の他の部屋に、弟子を一時的に預けるしかなくなる。「改めて貴公俊の指導、監督を十分にしていく気持ち」と話す貴乃花親方にとっては、最もダメージを受ける処分とも言えるのだ。

 果たして“改心”の姿勢を見せる貴乃花親方の猛アピールは協会側へ伝わるのか。それとも、親方衆の間に広がる厳罰ムードを協会が酌み取るのか…。26日に東京・両国国技館で開かれた理事会で八角理事長(54=元横綱北勝海)が再選された。最終的に協会トップはどんな判断を下すのか、今後の動向から目が離せない。