大相撲春場所千秋楽(25日、大阪府立体育館)、前日の14日目に8場所ぶり4度目の優勝を決めた横綱鶴竜(32=井筒)が大関高安(28=田子ノ浦)に取り直しの末に完敗。何とも締まらない幕切れとなった。

 勝てば優勝が決まった14日目の大関豪栄道(31=境川)戦では、土俵際のはたき込みで辛勝。千秋楽では横綱らしい相撲が期待されたが、高安に一方的に攻められた上に土俵際でまたしても引き技を見せた。

 軍配は鶴竜に上がったが、横綱の足が土俵を割ったのと大関の体が落ちるのが同時と見なされ取り直しに。2度目は高安に一気に寄り切られ、13勝2敗で場所を終えた。

 それでも右手指に故障を抱えながら優勝を果たし、何とか一人横綱の面目を保った。優勝インタビューで「いろんな思いがこみ上げてくる。去年一年間、本当につらい時間を過ごして、その中でたくさんの人に応援してもらって、僕を信じてくれた全ての人に感謝したい。これからも、もっともっとできるんだという確信も持てた」と語った。

 この1年間は4場所連続休場を経験。元横綱日馬富士(33)による十両貴ノ岩(28=貴乃花)への傷害事件では、酒席に同席しながら暴行を止めなかったとして、給与不支給の処分も受けた。

 どん底と言っていい状況から立ち上がった横綱は「本当につらかったし、『神様は乗り越えられない試練を与えない』という言葉を信じてやってきた」と昨年、治療師から教えてもらった言葉を披露した。

 ただ、取り直し2度など辛勝が続いた土俵を振り返り「疲れました」と苦笑い。今回の優勝で「また一つ、自分が変われたし、強くなれた。まだまだ精一杯頑張ります」と話した。