もはや、どうにもならないということか。大相撲春場所9日目(19日、大阪府立体育会館)、貴乃花親方(45=元横綱)は弟子の十両貴公俊(たかよしとし=20)が8日目(18日)に支度部屋で付け人に暴行を加えた問題で、日本相撲協会の八角理事長(54=元横綱北勝海)らに謝罪。危機管理委員会による事情聴取にも応じ、今場所初めて役員としての職務を果たすなど“改心”した姿を見せた。とはいえ、これまでの一連の問題行動の積み重ねで協会から「厳罰」を受けることが濃厚となった。

 この日の貴乃花親方は朝稽古後に報道陣に対応し「あるまじき行為。言い訳がつかない。勝負以前の問題。暴力は絶対にしてはいけないと厳しく育ててきたつもりだが、こういうことが起こった」と険しい表情を浮かべた。午前10時には大阪府立体育会館で開かれた緊急の役員会に出席。八角理事長らの前で「今回は申し訳ありません」と謝罪した。

 その後は会場近くのホテルで貴乃花親方と貴公俊、暴行を受けた付け人が危機管理委による事情聴取を受けた。午後2時すぎに会場の役員室へ戻ると、午後5時25分に引き揚げた。初日から無断欠勤や遅刻、早退を繰り返してきたが、幕内後半戦途中まで約3時間の滞在。初めて「出勤」としてカウントされた。事前に他の役員からクギを刺され、本人も素直に承諾したという。

 これまでの相撲協会に対する反抗的な態度と比べれば、まるで別人のようだ。今回の一件の今後の対応についても貴乃花親方は「協会に任せる」と話しており、相当なショックを受けているのか、それとも他の理由があるのか。その真意は分からない。いずれにせよ、貴乃花親方は協会から重い処分を受けることだけは間違いなさそうだ。

 相撲協会は春場所後の29日に開かれる理事会で貴乃花親方と貴公俊の師弟への処分を協議する。暴力行為は絶対に許されないとはいえ、被害を受けた付け人は休場するほどの重傷を負ったわけではなく、警察への被害届も提出しないという。このため、師匠に対しては「厳重注意」や「けん責」とするのが妥当な線。ただ、貴乃花親方の場合は、貴公俊に対する監督責任だけを問われているわけではない。

 同親方は先月の理事候補選挙に落選後、親方衆を対象にした講習会や理事会をことごとく欠席。今場所の異常な勤務実態も問題視されてきた。今回の暴行騒動が起きる以前の段階ですでに協会幹部の間からは「処分しないわけにはいかないだろう」との声が上がっていただけに、今回の暴行問題はその流れの“決定打”となった格好だ。

 元横綱日馬富士(33)による十両貴ノ岩(28=貴乃花)への傷害事件では、貴乃花親方が協会による調査に非協力的な対応を見せた。その結果、1月の評議員会で理事を解任されて事実上の2階級降格となる「役員待遇委員」となった。理事候補選の落選を受けて、春場所終了後には役員待遇も外れ、さらに1階級下の「委員」となる見込み。一連の問題行動と今回の弟子への監督責任が累積したことで、今度は「主任」以下にされる可能性もある。その場合は、トータルでなんと4階級以上の降格となる。

 現時点では貴乃花親方に対する処分内容が確定しているわけではない。当然、春場所10日目以降の勤務内容も加味されることになるが、貴乃花親方はこの日に見せた“反省”の態度を今後も示し続けるのか。土俵上から「荒れる春場所」の“主役”の座を奪った同親方。その動向に注目が集まる。