角界に新たな衝撃が走った。大相撲春場所8日目(18日、大阪府立体育会館)、貴乃花親方(45=元横綱)の弟子の十両貴公俊(たかよしとし=20)が支度部屋で付け人を殴打する事件が発生。日本相撲協会が調査に乗り出す事態となった。貴乃花親方は19日朝、貴公俊の9日目からの謹慎と休場を発表したが、火消しとはならず。元横綱日馬富士(33)による十両貴ノ岩(28=貴乃花)への暴行事件をめぐる相撲協会の対応を問題視して内閣府に告発状を提出したばかりだけに、自らの弟子による暴行騒動で窮地に追い込まれた――。 

 貴乃花親方をめぐる一連の騒動が新たな局面を迎えた。18日、弟子の貴公俊は会場内にある東の支度部屋で、付け人を務める同部屋の序二段力士を複数回にわたって殴打した。日本相撲協会の春日野広報部長(55=元関脇栃乃和歌)によると、貴公俊は取組後に鏡山危機管理部長(60=元関脇多賀竜)に呼び出され、殴ったことを認めたという。

 貴公俊は取組前に土俵下の控えに入るタイミングが遅れ、審判から注意を受けた。付け人の連絡ミスが原因で、それに立腹して暴行に及んだとみられる。殴られた付け人は口から出血したという。協会は師匠の貴乃花親方に連絡し、19日にも本人らから事情聴取を行う。貴公俊は今場所が新十両。弟の十両貴源治(20)とともに史上初の双子兄弟の同時関取として注目を集めていた。

 ここで改めてクローズアップされるのが師匠の貴乃花親方の“問題行動”だ。本場所開催中、全親方衆は会場に出勤する義務を負う中、初日から4日連続で欠勤。相撲協会の出勤命令を受け、5日目(15日)から会場に姿を見せるようになった。しかし、勤務場所の役員室に午後1時ごろまでに出勤するルールを守らずに遅刻を連発。いずれも、3分に満たない滞在時間で早退した。

 18日は一転、午前11時半すぎに役員室に到着。まだ他の役員が出勤していない人けのない役員室の中で独り、ひっそりとたたずんでいたという。役員の一人は「自分が来たときにはいたから驚いた」。その後の貴乃花親方は関係者に「館内(会場内)にいるから」と言い残して役員室から退室。会場の通路で携帯電話で通話する場面もあった。

 貴乃花親方は午後0時40分すぎに役員室に戻ると、その20秒後に再び退出。午後0時50分ごろには会場から立ち去ったことが目撃されている。午後1時すぎに出勤した八角理事長(54=元横綱北勝海)と顔を合わせることはなかった。

 この日は1時間以上、会場に滞在していたとはいえ、本来は幕内の取組まで見届けるのが協会役員の務め。協会幹部は改めて「出勤として認められない」と断言した。しかも、この日は弟子がトラブルを起こした時点で、師匠が“職務放棄”で会場に不在とは…。もはや、協会の役員としても、部屋の師匠としても責任を果たしていないことは明らかだ。

 貴乃花親方は日馬富士による弟子の貴ノ岩への暴行事件をめぐる相撲協会の対応を問題視して内閣府に告発状を提出したばかり。同親方には今回の弟子による暴力行為の説明責任が生じることはもちろんのこと、暴行を受けた付け人も貴ノ岩と同じ弟子だけに、日馬富士の事件と同様に真実を明らかにするために警察にも被害届を提出しなければ筋が通らない。

 暴行の被害者サイドから、今度は加害者サイドの監督責任も問われる格好となった貴乃花親方は19日朝、京都・宇治市の部屋宿舎で取材に応じ、貴公俊の9日目からの謹慎と休場を発表。「深刻。暴力を振るったことは言い訳がつかない。(ファンに向けて)大変申し訳なく思っています。(貴公俊に)改めて厳しく指導していきます」とコメントした。

 貴乃花親方は同日午後にも、相撲協会に弟子による不祥事の報告に行くことを明かしたが、さすがにこれまでのように短時間で会場を後にすることはできないだろう。今場所は自身の“問題行動”で土俵上の話題を吹っ飛ばしてきたが、土俵外の「荒れる春場所」はまだまだ続きそうだ。