大相撲春場所5日目(15日、大阪府立体育会館)、初日から「出勤拒否」を続けていた貴乃花親方(45=元横綱)が初めて会場に姿を見せた。しかし、勤務場所である日本相撲協会の役員室に入ったものの、滞在時間はわずか2分41秒。トータルでも10分ほどしか会場の敷地内にはいなかった。とても正式な「出勤」とは認められないような“怪行動”に、角界内では新たな波紋が広がっている。

 貴乃花親方が車で会場に到着したのは午後1時50分。そのまま役員室に向かい、同1時54分に入室すると、その2分41秒後には退室。待ち受ける報道陣に対して「役員室に行った? 私から言うことはありません。まあ、あいさつ」と語ると、その後は地下駐車場に待機させていた車に乗り込み、午後2時には会場から立ち去った。貴乃花親方が会場の敷地内にいたのはトータルでも約10分間のことだった。

 相撲協会の幹部は「これでは、とても“出勤”したことにはならない。場所を見届けるのが(相撲協会の)役員としての務めだ」と苦言を呈した。本場所開催中は、全親方が会場に出勤する決まりがある。現在の貴乃花親方は「役員待遇委員」で、本来は相撲協会の役員室で本場所の運営を管理しなければいけない立場にある。しかし同親方は初日を“無断欠勤”。その後も4日連続で役員室に姿を見せなかった。

 相撲協会は2日目(12日)、八角理事長(54=元横綱北勝海)の名前で「役員室に出勤するように」とファクスによる文書で貴乃花親方に通達した。4日目(14日)にも、出勤を命じる2度目の文書を送付している。5日目になって貴乃花親方が初めて会場に来たのは、協会の通達を受けてのものなのかどうかは定かではない。

 この日は、貴乃花親方が役員室内で八角理事長ら執行役員から注意される場面もあったが、関係者によると、着席することなく「失礼します」と言って部屋から出ていったという。今回の貴乃花親方の行動は「出勤」としてカウントされるのかは微妙なところ。協会役員の一部親方は、所用のため全取組終了前に早退している実態があるとはいえ、少なくとも数時間は会場内に滞在しているからだ。

 わずか2、3分の滞在時間を正式に「出勤」とするのは世間の常識から見てもかなりの無理がある。前出の協会幹部のみならず、親方衆の間からも「いったい、何をするために来たのか」「2、3分しかいないことは考えられない」などと猛反発が広がっている。

 貴乃花親方は初日から4日連続の「出勤拒否」が問題視されていたばかりで、ようやく出勤したかと思いきや、今度は滞在時間2分41秒という謎の行動で、角界内に新たな波紋を広げることになった。協会側も対応に苦慮している模様で「平成の大横綱」は、いったい何を目指しているのだろうか。その真意はいまだ見えないままだ。