いったい、どこへ向かっているのか? 平成の大横綱の“迷走”が止まらない。大相撲春場所2日目(12日、大阪府立体育会館)、前代未聞の「告発騒動」を起こした貴乃花親方(45=元横綱)は2日連続で会場に姿を見せなかった。この日夜に更新した貴乃花部屋の公式サイトの中で、同親方は欠勤の理由などを説明。自らの正当性を主張したが、その内容は不可解な点ばかり。角界内にまたまた、新たな波紋を呼んでいる。

 貴乃花親方は春場所初日(11日)を“無断欠勤”したのに続き、この日も会場の役員室に姿を現さなかった。同日夜に部屋の公式サイトでメッセージを更新し、冒頭で元横綱日馬富士(33)から暴行を受けて2場所連続で休場していた弟子の十両貴ノ岩(28)が今場所から復帰できたことを報告。感謝の言葉をつづる一方で、自らが会場に出勤していない理由を次のように明かした。

「貴ノ岩は、頭部に負った傷の回復状況から、心身への影響や後遺症等について予断は許さない状況であり、担当医師等と連絡を取りながら慎重に見極めていく必要がございます。そのため、私は、場所中、エディオンアリーナ大阪(大阪府立体育会館)に常時滞在することは極めて難しい状況でございます」(原文ママ、以下同じ)。

 一見すると正しい主張にも見えるが、実際にはいくつかの疑問符が付く。親方衆は全員が何らかの形で本場所の運営に携わるものの、各親方の勤務時間は担当部署により異なる。すべての親方衆が全取組終了まで「常時滞在」しているわけではない。「指導普及部副部長」の肩書を持つ貴乃花親方の場合は、相撲協会の役員室に来た時点で出勤としてカウントされ、特別な事情があれば早退することも可能。弟子の不測の事態に備えるなら、相撲協会の了解を得た上で、貴ノ岩と一緒に京都・宇治にある部屋へ戻ればいいだけのことだ。

 不可解な点は他にもある。貴ノ岩は初日、全関取衆が会場の正面口から入る決まりに反して裏手から場所入り。相撲協会から注意を受け、2日目はルールに従って正面から入った。この点について貴乃花親方は「貴ノ岩の心身への影響を鑑み、正面入口からの出入りをご容赦いただく場合がございます」と説明したが、これも事前に協会と相談しておけばいいだけの話だ。

 メッセージの最後には「なお、以上につきましては、日本相撲協会にも、その旨ご説明させていただいております」。この日に、同様の主張を協会側へ文書で通知したと見られる。ただ、貴乃花親方自身が協会への届け出をせずに初日を欠勤したことや、貴ノ岩に対する特例措置を事前に相談しなかったことに変わりはない。

 相撲協会の関係者の間では「部屋の師匠とか親方とか言う以前に、社会人として失格だ」との声も上がっている。貴乃花親方は9日、日馬富士の暴行事件をめぐる協会の対応に「重大な疑義」があるとして内閣府公益認定等委員会に告発状を提出した。春場所初日の2日前のタイミングで角界内に大騒動を起こし、場所が始まってからも“場外乱闘”を展開。

 その真の目的は、いったいどこにあるのか。平成の大横綱の胸の内は誰にも分からない――。