大相撲春場所初日(11日、大阪府立体育会館)、元横綱日馬富士(33)から頭部などに暴行を受けて2場所連続で休場していた十両貴ノ岩(28=貴乃花)が、十両翔猿(25=追手風)を寄り切って白星発進した。貴ノ岩にとっては3場所ぶりの勝利。頭から強く当たる場面こそなかったものの、幕内上位経験者が格の違いを見せた。

 取組後に支度部屋に戻ると「一生懸命やるだけです。一生懸命やるだけ。必死でした」と「一生懸命」「必死」という言葉を何度も繰り返した。

 この日の白星にたどりつくまで不安は尽きなかった。京都の宿舎に入ってから稽古を再開したものの、内容は四股やテッポウなどの基礎運動やぶつかり稽古のみ。相撲を取る実戦的な稽古を再開したのは、本番4日前の7日になってから。それも数番取って、感触を確かめるだけだった。

 師匠の貴乃花親方(45=元横綱)も愛弟子の出場にあたって「どこまでできるか分からないが、今までの経験と実績を生かしてやってくれると願っている」と話していた。事実上の“ぶっつけ本番”で復帰初白星をつかんだ。十両残留、さらには幕内復帰へ向けて、幸先のいいスタートを切った。