日本相撲協会は9日、大阪市内で理事会を開き、2月に道交法違反(無免許運転)で略式起訴されていた幕下の大砂嵐(26=大嶽)に引退勧告の処分を決めた。理事会に呼ばれた大砂嵐は処分を受け入れ、同日付で引退届を提出した。退職金は30%減額して支給されることになったとはいえ、解雇同然の厳罰。全ては大砂嵐がついた「ウソ」が決定打となった。

 相撲協会は力士によるバイクや乗用車の運転を禁じているが、大砂嵐は1月1日と同3日に長野県内で有効な運転免許証を持たずに乗用車を運転したとされている。3日には追突事故も起こし、当時は「妻が運転していた」と説明。協会の危機管理委員会の聴取でも一貫して自らの運転を否定してきた。

 だが、その後の警察の調べに対して大砂嵐は運転していた事実を認めた。危機管理委員会の鏡山部長(60=元関脇多賀竜)は理事会後の会見で「3回の危機管理委員会の聴取で全てウソを話していた。それが許せなかった」と憤慨。これが厳罰に拍車をかけた。

 過去にも現役力士が乗用車を運転し、事故を起こしたことで協会側から処分を受けた例は数件ある。だが、最も重大過失といえる2000年12月の幕内闘牙(43=現千田川親方)の死亡事故の時も2か月間の自宅謹慎と3か月間減給20%の処分だった。他に事故を起こした力士もほとんどが現在も協会に親方として残っていることを思えば、今回の大砂嵐の処分の重さは際立っている。

 師匠の大嶽親方(57=元十両大竜)は「横綱になるためにエジプトから来たのに、こうなってしまったのは残念だと思う」と本人の胸中を代弁した。文化の違いを克服して話題となった個性派力士は、正直になれなかったことで土俵を去ることになった。