貴ノ岩の春場所出場の背景 貴乃花親方の苦しい胸の内“ぶっつけ本番”のリスク

2018年03月10日 11時00分

春場所出場が決まった貴ノ岩。十両残留へ、7勝がノルマとなる

 大相撲の元横綱日馬富士(33)から頭部などに暴行を受けて2場所連続休場中の十両貴ノ岩(28=貴乃花)が春場所(11日初日、大阪府立体育会館)に出場することが9日決定した。傷害事件の被害者であることを考慮され、今場所の番付は幕下に陥落せずに十両に据え置く特例措置が取られていた。実戦的な稽古を再開してからわずか3日、貴ノ岩を出場させる決断を下した師匠の貴乃花親方(45=元横綱)の胸中は――。

 騒動の渦中にいた貴ノ岩が春場所に出場することになった。9日朝の稽古後、師匠の貴乃花親方は報道陣の問いかけに「出ます、出ます。本人の意思を尊重して、昨日の晩、話をしました」と明かした。貴ノ岩は「出る、出させてください」と話したという。

 昨年10月の秋巡業中に鳥取県内で日馬富士から暴行を受けた貴ノ岩は頭部などを負傷。同11月の九州場所中に事件が発覚し、角界全体を巻き込む大騒動となった。当時巡業部長だった貴乃花親方は日本相撲協会へ報告せずに独断で警察へ被害届を提出。現役横綱による刑事事件にまで発展した。

 世間の注目を集めるなか、当の貴ノ岩は“雲隠れ”。病院でのリハビリなどに時間を費やし、稽古ができない日々が続いた。騒動が発覚してから初めて公の場に姿を見せたのは、春場所の新番付が発表された先月26日。京都・宇治市の部屋宿舎で朝稽古を行い、心身ともに回復したことを印象づけた。

 ただ、春場所での復帰へ向けた調整は慎重に進められてきた。稽古再開後の内容は連日、四股やテッポウなどの基礎運動やぶつかり稽古のみ。今月1日には貴ノ岩自身が初めて報道陣の前で口を開いたものの、貴乃花親方が2分余りで取材を打ち切る一幕もあり、神経質になっている様子をうかがわせた。貴ノ岩が相撲を取る実戦的な稽古を再開したのは本番4日前の7日になってから。十両力士を相手に立ち合いで頭からぶつかる場面もあった。

 8日には幕内上位の貴景勝(21)とも相撲を取った。とはいえ、万全の状態で場所に臨むためには、あと1週間は時間の猶予が欲しかったところだろう。貴乃花親方が「本場所の土俵はまた違う」と話している通り、稽古場と本場所の土俵は次元が違う。

 2場所連続休場や稽古不足による相撲勘の衰え、ケガを負った頭から当たることへの恐怖心、15日間を乗り切る体力面…。現時点では多くの不安を残しており「ぶっつけ本番」で臨むことにはリスクも伴う。

 貴乃花親方も「まあ、やってみないと分からないですけど。死力を尽くす思いでやるというね」と見切り発車であることを半ば認めた。

 出場の可否はそれだけ悩ましい判断だった。相撲協会は貴ノ岩が傷害事件の被害者であることを考慮し、全休明けの今場所を幕下に陥落させず、十両に据え置く特例措置を取った。

 それでも、番付は休場する前の東前頭9枚目から西十両12枚目まで降下。確実に十両に残留するためには7勝が必要で、6勝以下なら関取の地位を失う危機にも直面していた。

 その動向に注目が集まる中、貴乃花親方は最終的に愛弟子を出場させることを決断した。この判断は貴ノ岩の今後にどう影響するのか。