暴行騒動はまだまだ終わらない。大相撲春場所(11日初日、大阪府立体育会館)を控えた1日、昨年11月に元横綱日馬富士(33)から暴行を受けて2場所連続休場中の十両貴ノ岩(28)が京都・宇治市の部屋宿舎で騒動後初めて取材に応じたが、本紙昨報のように師匠の貴乃花親方(45=元横綱)は途中で取材を打ち切るなどピリピリムードだった。そうした一連の動きの中、日本相撲協会と新たな“溝”が生じていたことも判明。本紙が舞台裏を徹底追跡した。

 騒動の発覚後、初めて公の場で報道陣の取材に応じた貴ノ岩によると、稽古を再開したのは京都入りしてから。それまでは病院でリハビリを続けてきたという。

 この日の取材対応には師匠の貴乃花親方も同席した。最初は明るい表情で「元気に稽古してます」と話していたが、報道陣からの「横綱から被害を受けた頭部(の状態)は…」との問いかけに態度が急変した。険しい顔つきで「いや、そういう話はちょっと。ごめんなさい。もうこのへんで」と質問をさえぎり、わずか2分20秒ほどで取材を打ち切った。

 突然の出来事に報道陣の間に緊張が走ったが、貴乃花親方が過敏に反応したのは、加害者の元横綱に対してか、弟子が被害を受けた事件についてなのか、頭部の状態なのか…。真意は定かではない。

 ただ、貴ノ岩が本場所の土俵へ復帰を果たしていない以上、まだ事件は師弟にとって「過去の話」ではない。弟子をかばう心情を含め、師匠が神経質になっている様子がうかがえた。

 今回の取材は報道陣からの要請に対し、貴乃花親方が承諾したことで設定された。注目度の高さから約70人もの取材陣が集結。一方で、貴乃花師弟が何を語るのかについては、角界内でも大きな関心を集めていた。貴乃花親方は2月にテレビ朝日系の番組に出演し、その中で日本相撲協会に対する批判を展開した。しかもテレ朝からは番組出演の際に必要となる申請書が相撲協会に提出されておらず“無断出演”だったことも発覚。この日も含めてテレ朝には大相撲の取材現場への「出入り禁止」の措置が続いている。その後に親方衆が緊急会合を開いて無断出演の問題を議題に挙げるなど、大きな波紋が広がっていた。

 そのような経緯があるだけに、今回の取材対応に当初は協会側も懸念を示していたという。親方衆の一人も「(貴乃花師弟が取材に応じることは)意外だった。今度は何を話すつもりなのか」と新たな“爆弾発言”を警戒していた。

 その心配は杞憂に終わったものの、協会側と貴乃花サイドとの間に横たわる深い「溝」が改めて浮き彫りとなった格好。両者の緊張関係は、今後もしばらく続くことになりそうだ。