大相撲初場所千秋楽(28日、東京・両国国技館)、ジョージア出身の幕内栃ノ心(30=春日野)の初優勝で幕を閉じる一方で、角界では間もなく“新たな戦い”の火ぶたが切られる。日本相撲協会は2年に一度の理事改選を迎え、2月1日に立候補者の届け出が行われる。理事候補はどのような過程で選ばれるのか。大きなカギを握る貴乃花親方(45=元横綱)の動向は? 注目が集まる選挙戦の行方を追った。

 今回改選される理事候補の定員は10人。2月1日に立候補の届け出を受け付け、届け出の人数が定員の10人以下なら無投票で理事候補が決定。定員を超えれば、翌2日に親方衆の投票による選挙が行われる。理事ではなく、あくまでも「理事候補」を選ぶ体裁になっているのは、最高議決機関である評議員会の承認を得て正式に理事に就任するからだ。

 立候補者数が定員を超えて選挙になった場合、投票権を持つ親方衆の人数は全部で101人(28日現在)。当選ラインは9~10票とされている。立候補者は相撲界で「一門」と呼ばれるグループごとに擁立し、基本的に親方衆は自らが所属する一門の立候補者に投票する。各一門ごとの現時点での立候補予定者と所属する親方衆の人数(持ち票)は別表の通り。

 一般的には、一門に所属する親方の人数が多いほどより多くの理事候補を当選させることができる。ただ、実際には必ずしも「一門に所属する親方衆の人数=立候補者の得票数」とはならないのが、相撲界のややこしいところ。一門によっては当選ラインを超える余剰票を他の一門の支援に回すケースや、親方衆の中には自らが所属する一門から“造反”して他の一門の立候補者へ投票する者もいるからだ。

 2010年、貴乃花親方が当時所属していた二所ノ関一門を離脱して出馬を強行(貴の乱)。大方の予想を覆し、他の一門の造反票を集めて理事初当選を果たした。これ以降、角界内では一門の「しがらみ」を嫌って親方衆が独自の思惑で投票する動きが広がっている。今回も、貴乃花一門と“隠れ支持者”の動向が最大の焦点。選挙の行方の大きなカギを握っている。

 現時点では他の5つの一門から9人が出馬する予定。その一方で、貴乃花一門は立候補者と出馬の人数を明らかにしていないだけに、不気味のひと言だ。
 貴一門から1人の出馬なら無投票、2人が出馬すれば選挙戦に突入することになる。立候補者は貴乃花親方のほか、阿武松親方(56=元関脇益荒雄)や、時津風一門を離脱して無所属となった錣山親方(54=元関脇寺尾)が事実上の貴一門として出馬するとの情報もある。

 角界関係者も「(貴乃花一門が)どう出るのかは全く分からない。“手の内”は、ギリギリまで見せないのでは」。元横綱日馬富士(33)の暴行事件をめぐっては、相撲協会の八角理事長(54=元横綱北勝海)ら執行部と貴乃花親方の対立が表面化したばかり。今回の理事候補選もやはり主役は貴乃花親方だが、両陣営による“神経戦”が直前まで続くことになりそうだ。