元横綱による傷害事件、立行司のセクハラ騒動、十両大砂嵐(25=大嶽)の無免許運転疑惑…。角界が相次ぐ不祥事に揺れるなか、日本相撲協会が力士らを対象に当面の間の海外渡航を事実上禁止していることが、22日までに本紙の取材で判明した。大相撲初場所(東京・両国国技館)の終了後に一時帰国を予定していた外国籍の力士などに影響が出ている。相撲協会が日本国内に力士を“軟禁”し、不祥事を未然に防ぐ強硬策に出た格好だ。

 初場所8日目(21日)に大砂嵐の無免許運転疑惑が発覚した余波は、9日目の22日にも及んだ。1月3日に大砂嵐が乗った車が長野県内で起こした追突事故で、県警は大砂嵐を道路交通法違反(無免許運転)の容疑で書類送検する見通しとなった。大砂嵐はエジプト人の夫人が運転したと説明しているが、県警は大砂嵐本人が有効な免許証を持たずに運転したとみて調べている。

 日本相撲協会は前日に続き、電話で県警に事故の詳細について確認。今後は捜査の結果を待って初場所終了後に処分を決める方針だが、無免許運転が事実なら本紙昨報通り解雇を含む厳罰は免れない。その大砂嵐は9日目から休場し、十両明生(22=立浪)との取組は不戦敗となった。通常なら関取が休場する場合は館内アナウンスで病名などが説明されるが、この日は「大砂嵐、本日より休場」と読み上げられただけ。休場理由が説明されない極めて異例の事態となった。

 元横綱日馬富士(33)による傷害事件や立行司の式守伊之助(58=宮城野)のセクハラ騒動、そして今回の大砂嵐の疑惑…。不祥事が相次いでいることで、角界内はピリピリとしたムードに包まれている。そんななか、日本相撲協会が当面の間の措置として、力士の海外渡航を事実上禁止していることが明らかになった。

 通常、力士らが日本から出国する場合には協会に対して届け出る必要がある。ところが今月に入って、ある外国籍の関取が治療を行う目的で一時帰国を申請したところ、協会から却下された。その他にも部屋の慰安目的の海外旅行が認められず、取りやめになったケースもあるという。角界関係者は「不祥事が続いたことで、かなり協会の執行部のほうも神経質になっているようだ」と内情を明かす。日本国内に“軟禁”し、不祥事を未然に防ぐ…そんな強硬手段に出たとも言える。

 日本出身、外国出身を問わず協会の目が行き届かない国外に出れば気分が開放的になり、つい緩みがちになることは確か。ただ、地方巡業がない2月は力士にとって、じっくり体のケアに時間を費やすことや精神面をリフレッシュする貴重な機会でもある。相撲協会の判断が正しいかどうかは別にして、今後に影響を及ぼす可能性もある。

 いずれにせよ、不祥事が続く負の連鎖の影響で角界内に異例の“戒厳令”が敷かれることになった。相撲協会は引き続き研修会なども定期的に行っていく方針。春日野理事(55=元関脇栃乃和歌)は「今後も(不祥事再発の)防止に努めていかなければいけない。個人はもとより、協会を挙げての問題と思っている」と話しているが、相撲界が平静を取り戻すのはまだまだ先のことになりそうだ。