不祥事続きの角界で新たな騒動が発生した。大相撲初場所8日目(東京・両国国技館)が行われた21日、エジプト出身の十両大砂嵐(25=大嶽)が1月初めに長野県内で車を運転中に追突事故を起こしたとして県警が道路交通法違反容疑で捜査していることが発覚。無免許運転だった疑いも持たれている。日本相撲協会の事情聴取に対して大砂嵐は車を運転していたことを否定。疑惑が事実なら、厳罰は免れない状況だ。

 大相撲初場所のさなか、角界がまたもや激震に見舞われた。この日、日本相撲協会は無免許で追突事故を起こしたとみられる大砂嵐本人と、同じエジプト出身の夫人、師匠の大嶽親方(57=元十両大竜)を国技館に呼んで事情聴取を実施した。捜査を行っている長野県警にも電話で事実関係を問い合わせた。

 相撲協会によると、1月初旬に長野県内で大砂嵐と夫人が乗った車が他の車への追突事故を起こしたことや、すでに大砂嵐が追突された相手方の損害を弁済していることなどを確認したという。相撲協会は内規で現役力士の運転を禁じており、大砂嵐も協会に車の運転をしないとする誓約書を提出している。

 大砂嵐は事故を起こしたことについて、師匠の大嶽親方や協会に一切報告しないまま初場所に出場していた。8日目までの成績は1勝7敗だった。本人は事故の報告を怠ったことの非は認めており、師匠の判断で初場所9日目から休場することになった。

 初場所後は幕下へ転落することが確実となった一方で、大砂嵐は相撲協会の聴取に対し、自らがハンドルを握って運転していたことを否定。妊娠している夫人が運転中に事故を起こした直後、夫人をかばうために運転席へ移ったと説明した。

 大砂嵐の弁護士によると、エジプト人の夫人に日本の雪山を見せるため一緒に長野県を訪れたという。また、もともと大砂嵐は国際免許証を持っておらず、エジプト政府が発行する免許証を夫人が所持。ただ、夫人の免許証は日本国内では無効の可能性がある。事情聴取後、大嶽親方は「師匠としておわび申し上げます。大事な時にこういう問題を起こし、私にも報告していなかった」と謝罪した。

 現時点で大砂嵐の一件は不透明な部分も多く、相撲協会は詳細を確認するため、調査を継続していく方針。ただ、仮に無免許運転などの疑惑が事実なら、解雇を含む厳罰は免れない状況だ。折しも、角界は元横綱日馬富士(33)による傷害事件や立行司の式守伊之助(58=宮城野)のセクハラ騒動など不祥事が相次いでいる。

 協会は全力士らを対象とした研修会を実施するなどしているが「負の連鎖」は一向に沈静化する気配はない。今後の展開次第では、協会トップの八角理事長(54=元横綱北勝海)をはじめ、執行部の“総辞職”などに発展する可能性も否定できない。大砂嵐の事故については真相究明が急務となるが、角界の混迷は、ますます深まるばかりだ。

☆大砂嵐金太郎(おおすなあらし・きんたろう=本名アブデルラフマン・シャーラン)1992年2月10日生まれ。エジプト・ダカハレヤ県出身、大嶽部屋所属。アフリカ大陸からの初の力士で2012年春場所初土俵、13年九州場所で新入幕。金星3個。得意は突き、押し。西十両8枚目。189センチ、160キロ。