納得しているわけではない――。大相撲初場所初日(14日、東京・両国国技館)、41回目の優勝を目指す横綱白鵬(32=宮城野)が小結阿武咲(21=阿武松)を突き落としで退け白星発進した。角界が元横綱日馬富士(33)の暴行事件や立行司の式守伊之助(58=宮城野)によるセクハラ騒動などの不祥事に揺れる中、白鵬自身も数々の“問題行動”で厳しい批判や処分を受けている。すっかり「ヒール」となった大横綱は土俵で結果を残して名誉挽回を図る構えだが、果たして…。

 白鵬が前人未到のV41へ向けて白星スタートを切った。阿武咲に押し込まれて後退する場面もあったが、土俵際で冷静に突き落としを決めた。取組後は「(今年最初の相撲で)いいスタートを切れたんじゃないかな。(土俵際は)余裕がなければ残れない。タイミングが良かった」と自画自賛。若手の挑戦を退けて「彼の相撲人生は長い。これからじゃないですか」と貫禄を漂わせた。

 角界が暴行事件やセクハラ騒動などの不祥事に大揺れの中で迎えた初場所は、異例ずくめの初日となった。恒例の優勝額除幕式では、昨年9月の秋場所で優勝した元日馬富士の除幕はなし。昨年11月の九州場所優勝の白鵬の除幕だけが行われた。立行司の式守伊之助はセクハラ行為による出場停止処分のため不在。横綱土俵入りや結びの一番は三役格行司の式守勘太夫(58=高田川)が代役を務めた。

 白鵬自身も数々の“問題行動”で厳しい批判や処分を受けた。昨年11月場所では、審判への「物言い」や優勝力士インタビューでの万歳三唱などで日本相撲協会から厳重注意を受けた。また、元日馬富士の事件では現場に同席しながら暴行を止められなかったとして減給処分となった。さらに、横綱審議委員会からは張り手やカチ上げなどの取り口に対して「横綱相撲と言えない」「美しくない」などとヤリ玉に挙げられた。

 白鵬は相撲協会の処分を素直に受け入れ、この日は指摘されていた乱暴な立ち合いも封印。ここまでは優等生的な振る舞いを見せている。

 ただ、白鵬に近い関係者は「横綱は(批判や処分の)すべてに納得しているわけではない。悔しい思いは土俵で晴らすつもりでいる」と証言する。

 昨年7月の名古屋場所では通算勝利数の記録を更新。偉大な記録として角界内外から称賛され、横審からは特別表彰まで受けた。一連の問題で白鵬自身の行動に非があったとはいえ、一部メディアなどでは今までに積み上げてきた実績までもが否定されるかのような扱いを受けた。心中では複雑な思いを抱いていることは確かなようだ。今は反論や不満はグッとのみこんで、土俵に専念するということか。

 白鵬は大相撲の信頼回復について「自分がやれることをやるだけ。あとは皆さんが決めることじゃないですか」と話すにとどめた。これまでにも数々の批判にさらされながら、圧倒的な成績を残すことで“雑音”を封じ込めてきた。今回も結果で周囲を黙らせることができるのか。大横綱にとっては、真価が問われる場所となりそうだ。