昨年12月28日に日本相撲協会が臨時理事会を開き、元横綱日馬富士(33)の暴行事件の被害を受けた十両貴ノ岩(27)の師匠、貴乃花親方(45=元横綱)の処分案を協議。貴乃花親方が巡業部長としての報告義務違反や相撲協会に対して協力を拒んだとして最高議決機関の評議員会に対して理事解任を求める決議を行った。4日の臨時評議員会で正式に解任となる。

 貴乃花親方は役員待遇委員となり、事実上の2階級降格。一見すると厳罰にも見えるが、実質的には協会側が“温情処分”を下した格好だ。「業務停止」処分の場合、理事としての職務のみならず、弟子の指導もできなくなる。業務停止期間が長期にわたれば、2月に予定される次期理事候補の選挙に出馬できない可能性もあった。

 現在の理事の任期は3月の春場所まで。八角理事長(54=元横綱北勝海)は、理事を解任された貴乃花親方が理事候補選挙に立候補できると明言。理事選に通りさえすれば、降格からわずか3か月後の春場所後には理事に復帰できるのだ。

 今回の処分の「落としどころ」は協会としても難しい判断を迫られた。もともと被害者側である貴乃花親方に対して重過ぎる処分を下せば、世論の反発を招きかねない。しかも常に予測不能の動きを見せてきた貴乃花親方だけに、どんな対抗手段に打って出るかも分からない。逆に減俸などの軽過ぎる処分では親方衆に示しがつかないばかりか、今後の違反者に厳しい処分を下せなくなる。

 最終的に協会が「名」を取り、貴乃花親方側が「実」を取った格好だ。