大相撲の元横綱日馬富士(33)による十両貴ノ岩(27=貴乃花)への暴行事件で、鳥取地検が28日にも傷害罪で元横綱を略式起訴する方針を固めた。また、日本相撲協会は28日の臨時理事会で貴ノ岩の師匠の貴乃花親方(45=元横綱)への処分を協議。これで騒動に一定の区切りをつけることになるが、相撲協会が今月25日に貴乃花親方と“緊密な関係”とされる人物に対して巨額の損害賠償請求訴訟を起こしたことが本紙の取材で判明。角界内が平穏を取り戻すまでには、まだまだ時間がかかりそうだ。

 鳥取地検が暴行事件を起こした元日馬富士を傷害罪で略式起訴する方針を固めた。元日馬富士は秋巡業中の10月25日夜から26日未明にかけて鳥取市内のラウンジの個室で酒を飲んだ上、素手やカラオケのリモコンで貴ノ岩を殴打。頭部に10日程度の裂傷などを負わせた疑いがある。元日馬富士は暴行の事実を認め、事件の責任を取って九州場所後の11月29日に引退した。地検による略式起訴を経て、元横綱は罰金刑となることが濃厚だ。

 その一方で、被害者である貴ノ岩の師匠の貴乃花親方も責任を問われることになった。巡業部長の立場にありながら巡業中の暴行事件について相撲協会に報告せず独断で警察に被害届を提出。その後も協会に対して非協力的な姿勢を貫いた。相撲協会は28日の臨時理事会で貴乃花親方への処分を協議。貴乃花親方は自らの行動の正当性を独自の文書や聴取などで主張してきたものの、騒動に一定の区切りをつけることになる。

 とはいえ、これで一件落着とはならない。角界では新たな“紛争”が勃発。相撲協会は今月25日、過去4年間にわたって協会の顧問を務めていた人物と会社を相手取り、合計約1億6500万円の損害賠償請求訴訟を起こしたのだ。

 相撲協会が作成した資料では「元顧問が当協会内での立場を利用し、当協会発注工事の受注会社から8000万円を受け取る等の背任的行為や利益相反行為を行っていた」と指摘した。「元顧問のこうした背任的行為は、公益財団法人である当協会のコンプライアンスを根本的に脅かすものであり、当協会の社会的評価や信用を著しく毀損した事実は看過できない」と提訴に至った理由を説明している。

 今回の訴訟で協会側は、すでに元顧問側に支払われた業務委託料相当額に当たる約8500万円のほか、信用毀損に伴う損害と不正行為を調査するために要した費用として約8000万円を請求。

 協会は不正行為の調査を継続しており、今後の調査結果次第では請求額を増額する可能性もあるという。

 かねて角界内では、この元顧問と貴乃花親方が“緊密な関係”であることが知られている。今回の訴訟で貴乃花親方は当事者ではないとはいえ、協会側の主張が全面的に認められた場合は、貴乃花親方自身の信用低下にもつながりかねない。

 11月の九州場所中に発覚し日本中の注目を集めた元横綱の暴行騒動の余波は、ついに年の瀬にまで及んだ。そして今度は、別の不祥事をめぐる新たな訴訟問題…。まだまだ角界内に平穏が訪れそうな気配はない。年が明けるとすぐに初場所(1月14日初日、東京・両国国技館)を迎えるが、果たして大相撲の2018年はどんな年になるのだろうか。