日馬富士騒動に続く角界ショック 富岡八幡宮の女性宮司が日本刀で惨殺

2017年12月09日 11時00分

2013年6月、横綱力士碑への刻名で、日馬富士(右から2人目)らと記念撮影に臨んだ長子さん(右端。左端は師匠の伊勢ケ浜親方、その右は当時の北の湖理事長)

 横綱の暴行事件に揺れる相撲界にも縁の深い神社で殺人事件だ。7日午後8時半ごろ、東京・江東区の富岡八幡宮の境内で女性宮司・富岡長子さん(58)ら3人が日本刀で切りつけられ、うち2人が死亡した。現場には元宮司で長子さんの弟・茂永容疑者(56)も倒れており、搬送先で死亡が確認された。長子さんを殺害後に、長子さんの運転手男性(重傷も命に別条なし)を日本刀で切りつけた妻真里子容疑者(49)を刺し、自殺したとみられる。江戸3大祭りの一つ「深川八幡祭り」や江戸勧進相撲発祥の地で「横綱力士碑」があることで有名な富岡八幡宮だが、宮司一族の骨肉の争いの末、姉弟が死亡するという最悪の歴史を刻むことになった。

 神が祭られる場が惨劇の舞台と化した。事件が起こったのは午後8時半ごろ。富岡八幡宮の境内に「刃物を持った人がいる」と通行人から110番。捜査員が駆けつけると、男性2人、女性2人が頭部や腹部などから出血し、あおむけの状態で倒れていた。

 4人は長子さんと、長子さんの運転手男性、2001年まで宮司を務めていた茂永容疑者、その妻真里子容疑者だった。運転手は真里子容疑者に刃渡り約45センチの日本刀で右腕などを切られ重傷だが、命に別条はないという。

 茂永容疑者は刃渡り約80センチの日本刀で長子さんの後頭部付近や胸などを刺して殺害。真里子容疑者も刺殺した後に自殺したとみられる。

 現場近くには血の付いたサバイバルナイフや日本刀があり、周辺は血の海。近隣住人は「8時30分ごろに、手提げのようなものを持った人物が、長子さんのレクサスがいつも止まっている駐車場の方に歩いていくのを見た。その道は変質者が出没するので、地元の人も避けていた。神社関係者とごく限られた人しか通らないところです」と話す。

 事件を受けて多数の報道陣のほか、やじ馬が集まり、上空にはテレビ局のヘリが舞い、深夜まで騒然となった。

 茂永容疑者は1994年、父親の後を継いで富岡八幡宮の宮司になったが、01年に辞任。その後、長子さんが宮司になった。

 富岡家と親交のある知人は「父親が宮司を退いた後、長子さんの1つ違いの弟が継ぎ、長子さんは事務方として実権を握っていたが、弟に女性問題や横領の話が出て、神社本庁から解任されたと聞いている。宮司がいなくなると富岡八幡宮を出て行かなきゃいけないとかで、土地を死守するために神学部を出ていない長子さんが急きょ宮司になった」と明かす。

 別の知人は「弟の女性関係など素行の悪さが書かれた怪文書が出回ったんですが、その怪文書を長子さんが書いてバラまいたと弟は思っていたようで…」と語る。

 そして、最初の事件が起きた。06年1月に茂永容疑者が、長子さんを脅迫した容疑で逮捕された。容疑は06年の年始早々、自身が退職した後を継いだ長子さんに「今年中に決着をつける。覚悟しておけ」「昔年のうらみ。地獄へ送る」などと書いたハガキを相次いで送ったというものだった。

 さらに一部週刊誌では3年前に、長子さんを批判する記事が掲載された。

 記事では、長子さんは正確には「代表役員(宮司)代務者」なのに、今年4月に境内に建立された記念碑に「宮司」と彫られていること、境内にある歴代横綱のしこ名が刻まれた横綱力士碑への鶴竜の刻名式の際にも「宮司」として相撲協会のホームページに登場したことが、肩書詐称だと指摘された。

 長子さんが境内に新築した住居の洋館が1億2000万円と豪華すぎるなどの指摘も関係者から上がっていたという。

 長子さんは7日午後2時45分にアップした自身のブログで「特に嫌なのが神職の集まる飲み会で、一部の神社の神主にはセクハラ、パワハラ、ネグレクト、嫌がらせ…が当たり前のように、横行している」とセクハラを告発。「次回同じ事があったら、実名公表します」ともつづっていた。

 こうした経緯をみても由緒ある富岡八幡宮の内部がトラブル続きだったことがわかる。今年は、宮司の人選をめぐって対立状態にあった神社本庁を離脱したことも話題になった。長子さんを宮司としたことを同本庁は認めなかったといわれる。今回の事件は人事に関する骨肉の争いの末に起きた可能性が高い。

 今年の稀勢の里を含めて、新横綱が誕生するたびに相撲協会の理事長ら幹部とともに参拝するのが習わしとなっている富岡八幡宮。暴行問題で引退した日馬富士の名が刻まれた13年には、長子さんが宮司として立ち会った。「大関力士碑」などもあり、相撲ファンにとっては人気スポット。そんな深い関係の神社と角界が世間を大騒ぎさせる事件に見舞われるとは…長い歴史の中でも何の因果なのか――。

【富岡八幡宮】江戸時代の1627年に創建された東京都江東区の神社。創建時から徳川将軍家の保護を受けて発展し、毎年8月の深川八幡祭りは見物客が水を浴びせる「水掛け祭り」として親しまれている。相撲と縁が深いことでも知られ、1684年から約100年間勧進相撲が開催されて、現在の大相撲の礎となった。1900年には歴代横綱のしこ名が刻まれた「横綱力士碑」が建立され、今年6月には第72代横綱稀勢の里関も刻名式に出席した。