引退・日馬を待つ巨額民事訴訟 貴親方が数千万円の賠償金請求も

2017年11月30日 16時30分

引退会見で頭を下げる日馬富士。師匠の伊勢ケ浜親方(左)は涙を拭う

 大相撲の横綱日馬富士(本名ダワーニャム・ビャンバドルジ=33、伊勢ヶ浜)が29日、日本相撲協会に引退届を提出した。10月の秋巡業中に鳥取県内で幕内貴ノ岩(27=貴乃花)に暴行を加え、貴ノ岩側は鳥取県警に被害届を提出。日馬富士は県警から任意での事情聴取を受け、暴行の事実を認めていた。この日の午後には九州場所宿舎の福岡・太宰府市内で会見。一連の騒動を謝罪した。突然にも見える引退劇の舞台裏には何があったのか。さらには“第2R”もささやかれる今後の展開を追った――。

 日馬富士は引退会見で「貴ノ岩関にケガをさせたことに対し、横綱としての責任を感じ、本日をもって引退させていただきます」と謝罪した。秋巡業中の10月25日深夜から26日未明に鳥取県内の酒席で、同じモンゴル出身の貴ノ岩に暴行を加えて負傷させた。鳥取県警の捜査は継続中で相撲協会も独自の調査を完了させていない。このタイミングでの引退は、突然の出来事にも見える。

 師匠の伊勢ヶ浜親方(57=元横綱旭富士)は「日馬富士が今回の問題の責任を感じて引退したいと早くから言っていた。(九州)場所中の間は控えさせていただいた」と説明。日馬富士は「(九州場所に出場する)力士たちに最後まで頑張ってほしいので、本日になった」。その言葉通りなら、すでに師弟は九州場所中に引退を決断し、その終了を待って発表に至ったことになる。

 しかし、今回の“電撃引退”は角界内では「既定路線」と受け止められている。日馬富士の暴行が明るみに出たのは今月14日。17日に都内で鳥取県警から事情聴取を受けた際には、貴ノ岩に対する暴行を認めている。この時点で「日馬富士が暴行を認めた以上は協会としては、かばえない。自分から身を引くしかない」(日本相撲協会幹部)との見方が強まっていたからだ。

 ビール瓶の使用や負傷の程度にかかわらず、横綱が暴行を加えた事実だけでも「アウト」ということ。しかも、相撲協会は九州場所中に貴乃花親方(45=元横綱)に対して貴ノ岩への調査協力を要請したものの、同親方はことごとく拒否。協会による調査は暗礁に乗り上げていた。中途半端な調査結果で日馬富士に処分を下せば、協会が世間から批判を受けかねない。

 日馬富士が自ら引退して騒動の幕を引くことは、角界内では当初から「落としどころ」の一つだった。相撲協会による処分前に、日馬富士が引退を決断すれば退職金や功労金が手に入るうえ、東京・両国国技館での引退相撲も開催できる。さらに引退し責任を取ったことで、傷害容疑で捜査を進める鳥取県警や、起訴などの処分を決める検察の判断に影響を及ぼす可能性まである。ただ、これにて一件落着…とはいきそうにない。今後注目されるのが貴ノ岩サイドの動きだ。

 日馬富士が引退を決めた現時点でも、角界内では「貴乃花親方が日馬富士に対して民事訴訟も起こすのでは」との噂が絶えない。事情に詳しい関係者は「貴乃花側が数千万円の賠償を求めるという話も聞いている」と漏らしている。すでに貴乃花親方は相撲協会に対して、貴ノ岩が来年1月の初場所も休場すると伝えており、番付は一気に幕下まで落ちることになる。

 土俵への復帰が長引くほど、貴ノ岩が被る損失も大きくなる。実際に受けたケガに加えて、精神的なダメージや休場による金銭的な損失を訴えれば「数千万円」という賠償内容も決して大げさとは言い切れない。

 事件の加害者だった日馬富士が引退し、貴ノ岩側はどのような行動に出るのか。今後の動向からまだまだ目が離せない。