大相撲九州場所(11月12日初日、福岡国際センター)の新番付が発表された30日、横綱日馬富士(33=伊勢ヶ浜)が福岡・太宰府天満宮で会見し、2場所連続10回目の優勝へ向けて意欲を示した。9月の秋場所は昭和以降では初めて3横綱が初日から休場する異常事態となった中、一人横綱として奮闘。奇跡的な逆転Vで評価を高めた。他の横綱陣が復帰する今場所も存在感を示せるか。改めて真価が問われることになりそうだ。

 日馬富士は会見で「自分の目標(V10)に向けて頑張っていきたい。連覇? それも目標。体と心を鍛えながら、15日間をしっかり務めたい」と今場所への意気込みを語った。優勝10回は、かねて掲げている目標の一つ。達成すれば初代若乃花や北の富士らと肩を並べることになる。

 9月の秋場所は3横綱が初日から休場したが、一人横綱として奮闘。劇的な逆転Vで綱の責任を果たした。日本相撲協会の八角理事長(54=元横綱北勝海)は「一人横綱で頑張った。最後まであきらめずに辛抱した」と称賛。横綱審議委員会の北村正任委員長(76=毎日新聞社名誉顧問)も「立派だった。気力に敬意を表する」と述べるなど評価を急上昇させた。一方で、親方衆の間では「内容が悪い」「豪栄道が自滅したから優勝できた」との見方があったことも確かだ。

 実際、3連敗を含む4個の金星配給は横綱として褒められたものではない。優勝争いで一時は3差をつけられた大関豪栄道(31=境川)が終盤に急失速したことで救われる格好に。ライバルの3横綱が不在だったことも、結果的に日馬富士にとっては“追い風”となった。

 その3横綱は秋巡業で復帰し、すでに相撲の稽古を再開している。先場所休場した横綱が出場すれば、本当の力関係が鮮明になることは間違いない。日馬富士は両ヒジなどに古傷を抱えるが、先場所に15日間を全うしたことで「相撲勘」という点ではリードした立場にいる。九州場所では「(横綱)4人が揃うと全く違う。こちらも気合が入るし、その場も引き締まる。(4横綱が出場すれば)今場所は非常に盛り上がるのでは。僕も(優勝争いに)ついていって頑張りたい」と横綱全員の“揃い踏み”を熱望したが…。

 他の横綱陣とVレースを繰り広げ、連覇とV10を達成してインパクトを残せるか。日馬富士には秋場所と違った意味で“試練”の場所となりそうだ。