大相撲秋場所11日目(20日、東京・両国国技館)、大関豪栄道(31=境川)が関脇御嶽海(24=出羽海)を寄り切って幕内で唯一の1敗をキープ。後続との勝ち星が2差に広がり、1年ぶりとなる2度目の優勝へ大きく前進した。今場所は3横綱が初日から休場し、2大関が途中休場する異常事態。看板力士としての役目を果たす和製大関は、角界にとっても“救世主”となっている。

 豪栄道が御嶽海を一気に寄り切って1敗をキープ。取組後は「いい間合いで立てた。体は動いている」と納得の表情を浮かべた。後続との勝ち星は2差に広がり、自身2度目の優勝へ向けて加速。和製大関は「そういうことは考えずに、自分の相撲を取り切るだけ。優勝経験がある? 過去のことは気にしていない。一日一番、しっかり勝ちにいく」と表情を引き締めた。

 今場所は白鵬(32=宮城野)、稀勢の里(31=田子ノ浦)、鶴竜(32=井筒)が初日から休場。3横綱が初日から不在は昭和以降では初めての異常事態の中で初日を迎えた。場所が始まると大関高安(27=田子ノ浦)が3日目、大関照ノ富士(25=伊勢ヶ浜)が6日目から途中休場。3横綱2大関の休場は99年ぶりという緊急事態となった。

 一方で、一人横綱の日馬富士(33=伊勢ヶ浜)は3日目から3連敗を喫して早々とV争いから後退。関脇・小結の三役陣も星が伸びず、代わりに阿武咲(21=阿武松)、千代大龍(28=九重)ら平幕力士が注目を集めることになった。

 ただ、これまでの平幕力士の活躍が場所全体の盛り上がりにつながっているとは言いがたい。横綱や大関を次々と撃破したわけではないからだ。

 日本相撲協会の関係者は「これまで目立たなかった力士が注目されることはいいこと」と前置きした上で「平幕が終盤まで2敗や3敗で残ることはよくあること。優勝までしてしまうのは…。逆に、休場者も含めて上位のふがいなさが目立ってしまう」と指摘。今場所で平幕力士が優勝するようなことになれば、むしろ休場や不振の上位力士の責任が問われかねないとの見立てを示した。

 その意味でも、看板力士の豪栄道が優勝すれば角界にとっては最も“収まり”がいいことは確か。審判部長の二所ノ関親方(60=元大関若嶋津)も「こういう場所だからこそ、最後は締めてほしい」と豪栄道に期待を託した。

 波乱続きの秋場所も、残り4日間。和製大関は、無事にゴールテープを切るしかない。