まさかのトリプル休場で角界に大きな衝撃が走った。横綱白鵬(32=宮城野)が8日、大相撲秋場所(10日初日、東京・両国国技館)の休場を表明。古傷の左ヒザの不安が解消せず、日本相撲協会に休場を届け出た。今場所は稀勢の里(31=田子ノ浦)、鶴竜(32=井筒)に続く横綱の休場となったが、優勝39回の大横綱に何があったのか。昭和以降で初めてとなる異常事態の中で行われる秋場所はどうなるのか――。

 目を覆うような看板倒れの状況に、角界は落胆するしかなかった。日本相撲協会の八角理事長(54=元横綱北勝海)は「こういう異例の事態となり遺憾です。せっかく4横綱が揃う豪華な顔ぶれで満員御礼が確実なのに、相撲ファンの皆さまには非常に申し訳なく思います」とのコメントを発表して謝罪。審判部長の二所ノ関親方(60=元大関若嶋津)も「横綱土俵入りも1人。ちょっと寂しい気がする」と嘆いた。

 今場所のポスターやチラシは4横綱の土俵入りの写真を使用し「4横綱時代」を前面に押し出していた。前売り券は即日完売。チケットを手に入れた多くのファンは4横綱の“揃い踏み”を期待していたはず。相撲協会にとっても誤算以外の何物でもない。中でも最大の誤算はこの日に決まった白鵬の休場。深刻なケガを抱えている稀勢の里と鶴竜の休場は、ある程度は予測がつく事態だったからだ。

 白鵬は7月場所で2場所連続39回目の優勝を果たし、完全復活を印象づけた。今場所も当然ながら、優勝候補の本命。その大横綱が欠けるとなれば各方面への影響は計り知れない。休場の直接の理由は古傷の不安が解消されなかったこと。師匠の宮城野親方(60=元幕内竹葉山)は左ヒザの炎症で全治3~4週間と説明し「(横綱は)無理をして変な相撲を取って(途中休場などで)迷惑をかけるなら万全で出たいという気持ちがあったのでは」と心情を代弁した。

 ただ、横綱の周辺を探ると、休場の理由はそれだけではなさそうだ。白鵬に近い関係者は「大きな記録を達成した後だし、今場所は気持ちの部分を上げていく難しさもあったようだ」。7月場所では最大の目標にしていた最多勝記録(1050勝)を達成。特に場所の後半は千代の富士(1045勝)と魁皇(1047勝)の2つの大記録に並ぶ、あるいは超える大一番が次々と続いた。

 大横綱でさえ「(今までに)こんな場所はなかった」と振り返った次の場所で、同じテンションを維持するのは容易なことではない。白鵬は最後に稽古場に姿を見せた6日に「体と心が一致しないとダメ」とも話していた。今場所は体も心も万全ではなかったということか。

 いずれにせよ、3横綱休場でV争いの混戦ムードに拍車がかかったことは確か。いったい、どのような結末が待っているのか。