満開の笑顔で復帰だ。故障のため2場所連続で途中休場し大相撲夏巡業も休んでいた横綱稀勢の里(31=田子ノ浦)が10日、茨城・日立市で行われた巡業から合流した。

 稀勢の里が巡業に参加するのは横綱昇進後初めて。地元・茨城県出身の横綱登場に、場内からは割れんばかりの大歓声が起こった。復帰初日は稽古に加わらず取組もなかったが、綱締めの実演や横綱土俵入りを披露し、県内外から詰めかけた約4500人の観客を沸かせた。

 当初は、14日に岩手・釜石市で東日本大震災復興支援の土俵入りで復帰が予定されていた。だが、先場所で痛めた左足首を動かせるようになったことで復帰の前倒しを決めたという。稀勢の里は「今日からまた稽古を再開する。しっかり体をつくる」と宣言。

 とはいえ、左腕の故障も含めて完治したわけではない。四股を踏んだ感触も「まだまだですね」(稀勢の里)。万全の状態に戻すまでは時間がかかりそうだ。横綱審議委員会は完全な状態での復帰を求めている。稀勢の里も「やれることをやるだけ」と語るのみで、秋場所(9月10日、両国国技館)へ向けて慎重な姿勢だった。

 一方でこの日は地元ということもあってか、笑顔のオンパレード。横綱白鵬(32=宮城野)とはリラックスモードで談笑する場面もあった。師匠の田子ノ浦親方(41=元幕内隆の鶴)が「部屋にいても稽古にならない」と語っていたように、部屋で一人悶々とする稽古と、巡業先で他の関取衆と触れ合いながらの調整では、メンタル面でどちらがいいかは明白。白鵬も稀勢の里について「肌つやが良かった」と“巡業効果”を口にした。

 確かに故障再発のリスクはあるが、合流初日に限って言えば巡業参加は“吉”と出たようだ。