和製横綱の行く末は――。大相撲名古屋場所6日目(14日、愛知県体育館)、横綱稀勢の里(31=田子ノ浦)が日本相撲協会に休場を届け出た。3月の春場所で痛めた左上腕と左胸に加えて、今場所5日目には新たに左足首を負傷。5月の夏場所から2場所連続での途中休場となった。日本相撲協会の八角理事長(54=元横綱北勝海)は万全の状態にしてからの復帰を求める一方、親方衆の間からは早くも「進退論」が飛び出している。

 この日の午前、稀勢の里は「左足関節靱帯損傷で約3週間の安静加療を要する」との診断書を日本相撲協会に提出し、2場所連続の途中休場が決まった。今回の休場は5日目の取組で左足首を痛めたことが直接的な理由。ただ、格下相手の序盤戦で2勝3敗と苦戦を強いられたのは、3月場所で負傷した左上腕と左胸の状態が万全ではなかったことが影響している。

 師匠の田子ノ浦親方(41=元幕内隆の鶴)は「本人と話をして決めた。相撲を取れる状況ではない」と説明。八角理事長は「考えが甘かった。休む勇気も横綱の責任。中途半端な状態で出るのは良くない。体に不安を抱えながらやっていた印象。次は15日間戦える体をつくって稽古を積んでくることだ」と苦言を呈し、万全の状態で復帰することを求めた。

 過去の例を見ても横綱が2場所連続で休場することは決して珍しくはない。しかし、負傷前と比べて別人のような相撲内容から角界内では「短命横綱」で終わるとの見方が急速に広まりつつある。親方衆の一人は「もう初優勝したときのような力は戻らない」と断言。別の親方も「次も同じこと(途中休場)を繰り返せば、進退という話になってくるだろう」と厳しい見方を示した。

 19年ぶりに誕生した和製横綱とあって、今も稀勢の里はファンの間で絶大な人気を誇る。春場所の劇的な逆転優勝の印象が色濃く残る現時点では、表立って批判されるようなムードはない。しかし、今後もふがいない相撲内容で途中休場を繰り返せば、いつ“潮目”が変わらないとも限らない。

 今後の稀勢の里の“横綱寿命”に大きく関わる要素もある。今場所は横綱鶴竜(31=井筒)が右足首のケガで4日目から休場となった。師匠の井筒親方(56=元関脇逆鉾)は「休場が多いということは、力が落ちているということ。次に出るときに(途中で)休場したり連敗すれば(引退を)決断する」。次の場所で進退をかけることを明言した。

 鶴竜が仮に早々と引退を決断するようなことになれば、次はいやが応でも和製横綱の出場の可否に関心が注がれることになる。

 このような状況下で、師匠と本人はどのような判断を下すのか。いろいろな面で注目を集めそうだ。