大相撲名古屋場所3日目(11日、愛知県体育館)、横綱稀勢の里(31=田子ノ浦)が幕内栃ノ心(29=春日野)に一方的に寄り切られる完敗。格下と当たる序盤戦で1勝2敗と黒星が先行する苦しい状況に立たされた。2場所連続で途中休場となれば、周囲の見る目が厳しさを増すことは避けられない。相撲のみならず、土俵外での行動にも大きな影響を及ぼすことになりそうだ。

 稀勢の里がまたしても完敗を喫した。栃ノ心に両前まわしを取られて頭をつけられると、反撃の糸口さえつかめないまま一方的に寄り切られた。取組後は報道陣の問いかけにも「いやー」「うーん…」と言葉にならない。最後に「明日しっかりやるだけ」と絞り出すのがやっとだった。

 2日目に初日を出したとはいえ、負傷している左上腕と左胸の不安はむしろ深まるばかり。審判部長の二所ノ関親方(60=元大関若嶋津)は「万全じゃないよね。すぐには良くならない」と厳しい見方を示した。格下と当たる序盤戦で1勝2敗と黒星が先行。これ以上負けが込むようであれば5月場所に続いて途中休場が現実味を帯びてくる。先場所は故障から間もない状況もあり、休場もやむなしという雰囲気があったが、同じことを繰り返せば印象は悪くなる。

 2場所連続休場となれば、相撲以外の行動にも厳しい目を向けられることになる。とりわけ横綱が休場した場合、角界内には復帰するまで土俵外で露出することを良しとしない風潮があるからだ。実際、横綱白鵬(32=宮城野)が休場した際には祝賀行事や激励会などが延期された例もある。

 稀勢の里は6月に山響部屋の部屋開きや茨城・鹿島神宮で横綱土俵入り。地元の茨城で後援会による激励会などに出席した。今回も15日間を全うできなければ、こうした活動もやりづらくなるだろう。

 実は、すでにケガの影響は一部に出ている。稀勢の里が1月場所で初優勝と横綱昇進を達成した際、茨城の牛久市と龍ケ崎市は市民栄誉賞の授与を決定。牛久市は2月に贈呈式が行われたが、龍ケ崎市は授与決定から半年以上経過した現在も贈呈式は実現していない。横綱が3月場所で負傷したため、延期されたままになっているのだ。

 同市の関係者は「日程は調整中」とした上で「(延期の理由は)横綱がケガをして治療されていたことに配慮させていただいた」と説明した。再び休場となれば郷土の英雄をたたえるせっかくの機会が、さらに遠のいてしまう可能性もある。

 果たして、稀勢の里は横綱として最後まで場所を全うできるのか。それとも…。これ以上は負けられない苦しい状況に追い込まれた。