大相撲夏場所10日目(23日、東京・両国国技館)、38回目の優勝を目指す横綱白鵬(32=宮城野)が関脇高安(27=田子ノ浦)を寄り倒して全勝をキープ。1差で追う大関候補を一蹴した。横綱となってから過去最長となる5場所連続優勝なしで迎えた今場所。進退問題の火種を消し、自ら公言する2020年までの現役続行を果たすため、賜杯奪回に向けた並々ならぬ決意を秘めた。

 大関候補を難なく退けた。左上手を取ってから頭をつけて相手に密着すると、最後は一気に前に出て寄り倒した。取組後は「また出直してこい。(高安は)一から稽古に励むのでは。今日はギアを上げた? 全然、上げてない」と貫禄たっぷり。高安の大関取りについては「(実力は)一番近いのは間違いないね」と“上から目線”で評価した。

 白鵬が最後に優勝したのは昨年の夏場所。その後は右足親指や右太ももなどのケガで2度の休場を余儀なくされた。横綱となってから5場所連続で優勝がないのは過去最長。優勝37回を誇る大横綱といえども、1年以上にわたってV逸が続けば進退問題とは無縁ではいられなくなる。

 かねて白鵬は東京五輪が開催される2020年までの現役続行を公言している。その“公約”を実現するために、今場所で優勝することは極めて重要な意味を持つと認識している。実際、夏場所が始まる前の段階から白鵬は周囲に「今回は自分が優勝する番」と宣言していたという。賜杯奪回にかける本気度は120%。初日から10連勝する展開も、昨年夏場所と全く同じ。その思いは、ますます強くなっているに違いない。

 この日は横綱日馬富士(33=伊勢ヶ浜)が幕内栃煌山(30=春日野)を一方的に寄り切って全勝をキープ。横綱稀勢の里(30=田子ノ浦)が4敗に後退して完全に脱落するなか、優勝争いはモンゴル勢の両横綱による一騎打ちの様相を呈している。ただ、日馬富士はヒジ、ヒザ、足首などに古傷を抱え、9日目には右足親指を痛めるなど満身創痍だ。

 星は五分でも、白鵬が優位に立つ状況は揺るがない。日本相撲協会の八角理事長(53=元横綱北勝海)は「白鵬は優勝の仕方が分かっている。このまま(の勢いで)いきそう」と指摘する。「最強横綱」と呼ばれた男が、復権に向けて突っ走りそうな雲行きだ。