大相撲夏場所9日目(22日、東京・両国国技館)、横綱稀勢の里(30=田子ノ浦)が平幕の栃煌山(30=春日野)に一方的に寄り切られて今場所2個目の金星を配給。3敗に後退し、初優勝からの3連覇はほぼ絶望的となった。取組後は報道陣からの質問にも終始無言。横綱昇進時に「常に優勝争いに絡むことが絶対条件」と宣言していた“公約”を果たすことはできなかった。

 春場所で痛めた左上腕と左胸にはサポーターやテーピングを施し、今も万全からは程遠い。V逸は当所から予想されていたことだが、今後は横綱として最低限の存在感を示せるかが焦点だ。角界関係者からは「せめて全勝している横綱(白鵬、日馬富士)のどちらかを倒して意地を見せてほしい」との声が上がる一方、出場を続けて負けが込めば「綱の権威」を傷つけるリスクも伴う。

 10日目以降は関脇↓大関↓横綱と難敵が控えており、厳しい戦いが続くことは間違いない。一般的には、横綱に求められるノルマは12勝。不調時でも10勝に届けば“許容範囲”とされている。逆に、横綱が1桁白星で終われば屈辱の極み。展開次第では再び途中休場の可能性も現実味を帯びてくる。

 日本相撲協会の八角理事長(53=元横綱北勝海)は「(優勝の可能性が)数字上は残っている限り、頑張らないと。(全勝の横綱との)対戦もある。明日から勝っていくことが横綱の務め。気持ちを切らさないようにすること」と奮起を促した。横綱として初めて直面する危機を乗り越えられるか。