大相撲春場所9日目(20日、大阪府立体育会館)、大関照ノ富士(25=伊勢ヶ浜)が幕内勢(30=伊勢ノ海)を寄り切って勝ち越しを決め、カド番を脱出。優勝争いでも全勝の新横綱稀勢の里(30=田子ノ浦)と関脇高安(27=同)を1差で追走している。

 一昨年の大関昇進後に両ヒザの故障が慢性化。10敗以上の大負けとギリギリでのカド番脱出を繰り返してきた。今場所はヒザの状態が相当にいいようで、7日目には豪快なつり出しを決めるなど、かつての力強さを取り戻しつつある。日本相撲協会の八角理事長(53=元横綱北勝海)も「今場所は踏み込んで、先に攻めている。(今までと)見違えるような相撲」と目を見張るほどだ。

 取組後の照ノ富士は舌も滑らか。「相手(勢)のほうが身長が高いのに、土俵に上がったら自分より小さく見えた。フツーにやれば勝てると思った。小さく見えてきたら、勝っちゃう」と得意げに話した。つい数場所前までは「早く8勝して勝ち越したい」「力が入らない」などと弱音を吐くことも多かったが、本来の持ち味であるビッグマウスが復活してきた。

 これも復調の手応えをつかんでいることの表れだろう。大関昇進当時は横綱候補の最右翼と目されていた大器。全勝の新横綱に不気味な“対抗馬”が出現した。