大相撲春場所8日目(19日、大阪府立体育会館)、新入幕の宇良(24=木瀬)が幕内琴勇輝(25=佐渡ヶ嶽)を破り、星を4勝4敗の五分に戻した。琴勇輝の強烈な突き押しに何度ものけぞりながら、いなして相手の背後に回り込むと最後は送り出して勝負あり。勢い余って、自らも土俵下に転落した。

 この日、NHKの大相撲中継にゲスト出演したボクシングの元世界3階級制覇王者の長谷川穂積氏(36)が思わず「面白い!」と叫んだ逆転劇。取組後の宇良は「相撲は流れ。体が動いてよかった。(取組中は)相手がどんどん攻めてくる。考えている余裕はない」と熱戦を振り返った。

 身長173センチ、体重128キロ。113キロで入門した当時から増量に取り組んできたが、幕内では2番目に軽量の小兵だ。そんな体格的な“ハンディ”をものともせず、多彩な技で大きい相手を翻弄。1月場所は十両以上では史上初となる「たすき反り」を決めた。この日も30キロ以上も重い琴勇輝に快勝。大阪出身で「ご当所」の今場所は、横綱や大関にも負けない大きな声援を受けている。

 日本相撲協会の八角理事長(53=元横綱北勝海)も「小さい人が大きい人に勝つのは、相撲の醍醐味の一つ」と小兵力士の奮闘に期待している。勝ち越しを決めて幕内に定着すれば、さらに人気がブレークすることは間違いない。宇良は後半戦へ向け「勝ち星をもっと増やしていきたい」。勝ち星のみならず、ファンが期待する“珍技”は飛び出すのか。異能力士から目が離せない。