大相撲春場所(12日初日、大阪府立体育会館)に新横綱として臨む稀勢の里(30=田子ノ浦)が6日、2つの“異変”に見舞われた。

 大阪市内の部屋宿舎での稽古で、出稽古に来た幕内嘉風(34=尾車)と2番取ったところでアクシデントが発生。横綱の左の眉付近に嘉風の頭が直撃し、ぱっくりと開いた傷口からは真っ赤な鮮血が大量にしたたり落ちた。突然の大流血に、大勢の後援者や見物客の表情が凍りついた。

 稀勢の里は稽古を打ち切って宿舎近くの病院へ直行。約2センチ開いた傷口を11針縫う処置を受けた。ただ、頭から激しくぶつかり合う相撲では額などから出血することは珍しくはない。宿舎に戻ると「ケガのうちに入らない。痛みは、ほぼゼロ」と一笑に付し「体も仕上がってきたし、かなり当たれている」と好感触を口にした。

 一方、この日は元小結で相撲解説者の舞の海秀平氏(49=顔写真)が場所前恒例の稽古視察に訪れた。同氏は語り口はソフトな半面、辛口な内容のコメントが多いことでも知られる。実際、これまでにも稀勢の里に対して「腰が高い」「稽古では残せるのに、本番で重圧がかかると残せない」などと厳しく指摘してきた。しかし「一番一番を大事に取っている。以前は簡単に負ける相撲があった。(横綱になって)見られているという意識が今まで以上にあるのでは。風格が出てきた」と大絶賛。「しっかり腰を落として低い体勢で踏み込んで左四つになれば、誰にも負けない」とまで言い切った。多少のリップサービスが含まれていたにせよ、ここまで高く評価するのは珍しい。

 もっとも場所の序盤からつまずくようであれば、再び「辛口評価」に逆戻りすることになるだろう。本番も高評価をキープできるのか。新横綱の真価が問われる。