大相撲初場所で初優勝した大関稀勢の里(30=田子ノ浦)の横綱昇進が23日、確定した。横綱審議委員会が東京・両国国技館で開かれ、全会一致で横綱に推薦。日本相撲協会は25日の臨時理事会で横綱昇進を正式に決定する。優勝1回での昇進に賛否がある中で誕生する和製横綱。次の春場所(3月12日初日、大阪府立体育会館)では、その地位に見合った実力を証明する構えだ。

 横審の守屋秀繁委員長(千葉大名誉教授)は「十分ふさわしい。安定した実力がある」と高く評価。横審の会合には3人の委員が欠席したが、いずれも賛成の意見を伝えていたという。

 昨年11月の九州場所は横綱鶴竜が14勝で優勝。稀勢の里は優勝次点とはいえ、2差の12勝どまりだった。横綱昇進の条件は「2場所連続優勝、または準ずる成績」。優勝1回で横綱に昇進した鶴竜(31=井筒)でさえ、綱取りの直前には14勝で優勝決定戦(優勝同点)に進出していた。

 そんな経緯から、審判部内では千秋楽の前日まで評価が二分。友綱副部長(64=元関脇魁輝)は「好成績の2場所で決める? そう思う。今場所後(の横綱昇進)はどうかと思う」と否定的な見解を示していた。一方で、二所ノ関部長(60=元大関若嶋津)は「昨年は年間最多勝(69勝)を取っている」と前向きな意見。審判部の若手の親方衆も賛同し、一気に「優勝=横綱昇進」の流れが出来上がった。

 相撲協会側の「横綱稀勢の里誕生」の思いは、この日の会合で形となって表れた。各委員に過去の4横綱(朝青龍、白鵬、日馬富士、鶴竜)の昇進前6場所の成績が示された資料を配布。これまでの横審の会合の中でも珍しい光景だった。

 稀勢の里は最多の74勝を挙げており、大関で全休が1場所あった白鵬(31=宮城野)は59勝。八角理事長(53=元横綱北勝海)は「去年1年間の成績を見て安定感が一目瞭然で(委員の)皆さんは驚いていた」。会合は約10分で終了。横審が全会一致で横綱に推薦する補強材料として、効果は抜群だった。

 稀勢の里は今場所の活躍のみならず、休場がない頑強さや大崩れしない安定感は「横綱」に値する。しかし「2場所連続優勝」の原則が拡大解釈された印象は否めない。今後は、大相撲ファンがすっきり綱取りを受け入れるためにも規則を改める必要もある。

 いずれにせよ、横綱昇進の可否の過程のなかで、稀勢の里本人に非はないことだけは確か。横審の推薦決定を受けた稀勢の里は「稽古場の振る舞いや生き方も見られている。中途半端な気持ちでいられない」と覚悟を語った。新横綱として迎える春場所では、万人を納得させる結果を残すしかない。