大相撲初場所12日目(19日、東京・両国国技館)、カド番の大関琴奨菊(32=佐渡ヶ嶽)が関脇玉鷲(32=片男波)に一方的に押し出されて8敗目。負け越しが決まり、次の春場所(3月12日初日、大阪府立体育会館)では関脇に陥落することになった。今月30日に33歳となる琴奨菊だが、来場所も現役を続行する構え。あくまで土俵にこだわり続ける理由とは――。

 取組後の琴奨菊は「これが今の力だと思う。最後まで集中して、やるべきことをやりきる。負けて終わるわけじゃない。辞めたら終わり。しっかり気持ちを立て直していきたい」と悔しさを押し殺しながら必死に前を向いた。昨年初場所で日本出身力士として10年ぶりに優勝を果たしてから、わずか1年。ここまでの凋落は本人も想像していなかったに違いない。

 これまで大関の地位を32場所(歴代10位)にわたって維持してきたが、今場所は古傷の左ヒザの不調などに苦しみ本来の馬力が鳴りを潜めた。序盤戦から黒星先行で7度目のカド番脱出はならなかった。現時点で師匠の佐渡ヶ嶽親方(48=元関脇琴ノ若)も琴奨菊も現役を続行する構え。規定では関脇で迎える春場所で10勝すれば大関に復帰できる救済措置がある。

 2場所連続で負け越した現状では決して簡単な条件ではないものの、返り咲きのチャンスにかけることになった。今月30日で33歳。角界の看板力士である大関にまで上り詰めた力士が引き際を考えても、おかしくない年齢に差し掛かりつつある。それでも、琴奨菊が現役にこだわり続けるのはいくつかの理由がある。一昨年に結婚した祐未夫人との間で「35歳までは頑張る」と誓いを立てているからだ。

 新しい家族の存在もある。九州場所を控えていた昨年11月7日、故郷の福岡・柳川市内で開かれた激励会に出席。詰め掛けた後援者や地元のファンの前で祐未夫人が第1子を妊娠していることを公表した。順調にいけば、春場所後の4月にも男児が誕生し晴れて「父親」となる。かねて「子供に物心がつくまでは現役を続けたい」と話していた琴奨菊にとって、当初から「陥落=即引退」の選択肢はなかった。

 ただ、大関復帰の可否が決まる春場所の成績次第では、心境に大きな変化が生まれる可能性も否定できない。これまでの相撲人生で最大の正念場を迎えることになりそうだ。