【大相撲九州場所】稀勢の里 横綱3連破の裏で「ニヤニヤ」封印

2016年11月25日 14時00分

ニヤニヤを封印した稀勢の里

 大相撲九州場所12日目(24日、福岡国際センター)、大関稀勢の里(30=田子ノ浦)が横綱日馬富士(32=伊勢ヶ浜)を寄り切って2敗をキープ。初めて3横綱を総ナメにして逆転優勝に望みをつないだ。今年は夏場所から3場所連続で綱取りに挑戦したが、いずれも横綱陣の厚い壁に阻まれてきた。難攻不落だった“包囲網”を突破できた理由とは――。

 

 稀勢の里が横綱3連破で逆転Vを視野に入れた。立ち合いは日馬富士の強烈なノド輪で突き起こされたが、得意の左おっつけで逆襲。そのまま左を差して前に出ると、相手の巻き替えに乗じて一気に寄り切った。取組後は「良かったと思う。とにかく前に出る気持ちで自分の相撲を取ろうと思った。また明日から集中してやります」と表情を引き締めた。

 

 10日目からの横綱3連戦で白鵬(31=宮城野)、鶴竜(31=井筒)、そして日馬富士と総ナメにした。稀勢の里が同じ場所で3横綱を倒したのは初めてだ。審判部副部長の藤島親方(44=元大関武双山)は「横綱を3日連続で倒すのはすごい。ここ何場所かは無理をしてリラックスしているようにも見えたが、今場所は自然体に見える」とこれまでとの違いを指摘する。

 

 実際、綱取りに挑んだ過去3場所では土俵下での控えや仕切りの際にニヤニヤと引きつったような笑みを浮かべていた。それに比べれば、取組前の不自然な表情は減ったようにも見える。角界関係者も「これまでとは土俵上での落ち着きが違う」と証言。少なくとも、これまでの綱取りとは違う精神状態で今場所は臨めていることは確かなようだ。

 

 秋場所は10勝どまりで横綱挑戦は白紙に。一方で同場所で全勝優勝した大関豪栄道(30=境川)の綱取りに注目が集まり、稀勢の里は重圧ゼロで今場所を迎えた。しかも、中盤までに格下に2つ取りこぼしたことで一時はV圏外に。日本相撲協会の八角理事長(53=元横綱北勝海)は横綱3連勝に「1敗とかできていれば、相撲は違っていた」と追いかける側の心理状況が奏功したと見る。

 

 この日に敗れた日馬富士は、3場所連続で綱取りに挑んだ稀勢の里を次のように評していた。「稀勢の里も30歳でしょう。ここから急に相撲の力がつくことはない。(優勝や綱取りにかける)気持ちがすべて」

 

 現時点で賜杯レースでトップに立つ鶴竜を1差で追いかける状況に変わりはない。ここから並んだときに自然体を保てるのか。稀勢の里にとっては「心」が試される残り3日間となりそうだ。