大相撲九州場所3日目(15日、福岡国際センター)、横綱白鵬(31=宮城野)が幕内魁聖(29=友綱)を上手投げで下し、初日から3連勝。史上3人目となる通算1000勝の大台に到達した。これまでに打ち立ててきた数々の記録に新たな勲章を加える一方で、土俵外でも圧倒的な“格の違い”を発揮している。まだしばらくの間は、「大横綱」として全力士のトップの座に君臨し続けることになりそうだ。

 白鵬が魁聖の巨体を豪快に転がして、通算1000勝を達成。魁皇(1047勝)、千代の富士(1045勝)に続く史上3人目の大台に到達した。これまで数々の偉業を成し遂げてきた白鵬にとっても、今回の記録は格別だった様子。「最高です。こんな日は久しぶりじゃないですか。優勝したような気分。ひと味もふた味も違う」と興奮気味に話した。

 9月の秋場所は右足親指のケガで横綱として初めて全休した。番付上は日馬富士(32=伊勢ヶ浜)、鶴竜(31=井筒)の両横綱に続く3番手にまで“降格”。東の支度部屋で座る場所は、定位置だった一番奥を日馬富士に明け渡した。だが、真の序列は誰の目から見ても明らか。本場所の土俵に復帰するやいなや、史上3人目の快挙達成で存在感を誇示。他の2横綱を完全にかすませている。

 その最強横綱は、今場所が始まる前から土俵外で“格の違い”を示している。徳島巡業を翌日に控えた10月23日の夜のことだ。紗代子夫人の故郷でもある徳島で、白鵬の個人後援会によるパーティーが開催された。約400人の出席者のド肝を抜いたのは、招かれたゲストの顔触れ。白鵬が主役の宴席に、なんと日馬富士と鶴竜が姿を見せたのだ。まるで大横綱の太刀持ちと露払いを務めるかのように…。

 両横綱以外にも三役経験者ら総勢十数人の関取衆が集まってパーティーを盛り上げたという。横綱大関の昇進祝賀会や結婚披露宴などに他の部屋の関取衆が招待されることはあっても、個人後援会の宴席に横綱をはじめとする所属部屋以外の力士たちが集結するのは極めて異例のこと。出席者の一人は「まさか3人の横綱が勢揃いするとは。こんなパーティーは、今までに見たことがない」と目を丸くした。

 事情に詳しい関係者は「白鵬のほうから日馬富士や鶴竜らに声をかけて集めたそうだ」と舞台裏を明かす。日馬富士と鶴竜から見れば、白鵬個人のためのパーティーに“にぎやかし要員”として呼びつけられたようなもの。本来であれば、同じ横綱として屈辱感を味わったとしてもおかしくはない。それでも有無を言わさず参加させてしまうところに、大横綱の絶大な影響力がうかがえる。

 横綱として初めて全休しようが、横綱の3番手に落ちようが、やはり白鵬は白鵬。優勝37回をはじめとする実績面はもちろんのこと、スケールの大きさで他を圧倒する存在であることを改めて知らしめた格好だ。

 節目の大記録を達成した最強横綱は、次の目標を問われると「まず1001勝です」。もちろん、東京五輪が開催される2020年までの現役続行を公言する白鵬にとって、魁皇や千代の富士の記録は射程内。前人未到の幕内1000勝(現在906勝=単独1位)も不可能な数字ではない。大横綱の立場は弱まるどころか、ますます揺るぎないものになりそうだ。