大相撲秋場所13日目(23日、東京・両国国技館)、全勝の大関豪栄道(30=境川)が2敗で追う横綱日馬富士(32=伊勢ヶ浜)を首投げで撃破して無傷の13連勝。カド番からの初優勝に王手をかけた。くしくも同じ日に、大関稀勢の里(30=田子ノ浦)が4敗目を喫して初優勝と来場所の綱取り継続が完全に消滅。両和製大関の“明暗”を分けたものとは――。

 この日の豪栄道は仕切りの間から日馬富士とにらみ合うなど気合十分。土俵際から捨て身の首投げが決まって逆転勝ちした。取組後は「(にらみ合いは)目をそらすとやられると思った。首投げ? 無我夢中でやった。(観客の)歓声を浴びて勝ったなと思った」。ついにカド番からの初優勝に王手をかけた。

 ここまで快進撃が続いた理由は何か。自らもカド番での優勝経験がある鳴戸親方(33=元大関琴欧洲)は「今場所は自分から前に出ているし、引いてしまうような相撲が少なかった。一番は気持ちの部分でしょ。変なプレッシャーとかもなかった」と指摘する。初日から8連勝でカド番を脱出した点も同じ。陥落の危機から解放されて前向きな気持ちで後半戦に臨むことができたのも大きな要因だ。

 くしくも同じ日、稀勢の里が横綱鶴竜(31=井筒)の下手投げに屈して4敗目。今場所の初優勝と来場所への綱取り継続が完全消滅した。日本相撲協会の八角理事長(53=元横綱北勝海)は「ずっと綱取りと言われて精神的な疲れもあったのかな」。続けて「(綱取りは)仕切り直し。来場所でどうこう言われるより、リセット(白紙)でいい」と明言した。

 稀勢の里の綱取りは3場所連続。「初優勝」と「綱取り」の二重の重圧を背負い続けてきた精神的な疲労は計り知れない。しかも、今場所は序盤の3日間で2敗。この時点で一つも星を落とせない状況となった。

 豪栄道とは逆に、負けられない心理が強く働いたことは間違いない。とうとう最後は気持ちが切れてしまったのか。取組後は「うーん。まだまだ、だね」と声を絞り出した。

 いずれにせよ、両大関の戦いぶりが大方の予想とは正反対になったことは確か。これだから、勝負の世界は分からない。