大相撲名古屋場所(7月10日初日、愛知県体育館)で横綱白鵬(31=宮城野)が史上3人目の通算1000勝(残り13勝)とV38の同時達成に意欲を見せた。最強横綱にとって、どちらの記録も達成は時間の問題。それでも、あえて今場所で達成しておきたい特別な事情があるという。大関稀勢の里(29=田子ノ浦)の綱取りに注目が集まるなか、白鵬に賜杯を譲る気は全くないようだ。

 白鵬は28日、名古屋市内で開かれた力士会に出席。本場所へ向けて「名古屋で応援してくれる方々に1000勝の大記録を見せられれば、自然と天皇賜杯は手元にあると思う。精一杯頑張りたい」と同時達成に強い意欲を見せた。

 大相撲の長い歴史の中で勝利数が4桁の大台に到達したのは魁皇(1047勝)と千代の富士(1045勝)の2人しかいない。V38なら自らの最多優勝記録も更新する。どちらの記録も達成は時間の問題となっているが、それでも、あえて今場所の達成にこだわるのには特別な事情がある。

 名古屋場所後の7月末には母国モンゴルでアマチュア相撲の世界王者を決める「第21回世界相撲選手権大会」が開催されるからだ。白鵬も帰国し、大会に出席することになっている。しかも今回は白鵬自身が大会運営にまで深くかかわっており、大会が開催される会場の土俵づくりなどには所属の宮城野部屋が全面的に協力しているという。

 単にゲストとして出席するのではなく“ホスト役”とも言える立場。そのメンツにかけても、大記録達成という手土産を引っさげて凱旋帰国を果たしたいのだ。

 昨年の名古屋場所ではV35を達成。モンゴルで「労働英雄賞」(日本の国民栄誉賞に相当)の受賞祝賀パーティーを控えていたことが、優勝の大きな原動力となった。過去の例からも、こういうときの白鵬はめっぽう強い。その白鵬は、綱取りに挑む稀勢の里に向け「『綱取り』という言葉を、そのまま理解してもらいたいね。あとは本人次第」と何とも意味深にコメントした。

 いずれにせよ、最強横綱に賜杯を譲る気はサラサラないことだけは確か。今場所も稀勢の里の前に、手ごわい相手として立ちはだかることになりそうだ。